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第五十四話 加速する想い

暇だ。
暇すぎる。
正月2日目。
ゲーム部の連中は、夢ちゃん以外はみんな実家に帰っている。
こんなに暇だと、昨日の事とか、今までの恋愛とか、まあ色々と考えてしまうわけで。
俺は夢ちゃんの事をどう思っているのだろうかと。
そして由希の事をどう思っていたのだろうかと。
そういえば、中学生の頃、こんな事をよく考えていた気がする。
誰が1番好きだとか、付き合うなら誰が良いとか、結婚するなら誰が良いとか。
その3人全て、バラバラの人が思い浮かんでしまった時は、自分自身大丈夫か?と思ったもんだ。
今思うと、違う人を思い浮かべてしまうのは、仕方がないような気もする。
チリちゃんと兄妹のように仲良くしても、夢ちゃんとはおそらくそんな仲にはなれない。
それぞれに性格も理想も違うのだから。
だからきっと、結婚する相手というのは、そんな理屈ではないのかもしれない。
結婚したい人と、実際にする人は、きっと微妙に違うのだろう。
今一番正解に近い答えだと思われるのは、お互いが必要とした時、人は結ばれるんだという説。
これは近いだけで正解ではない。
何故なら、今俺にはみんなが必要だからだ。
たった数日みんながいないだけで、俺はこんなに気分が浮かない。
昨日は夢ちゃんのおかげで楽しかったけど。
でもマイナス地形効果に少しやられたな。
ああ、もしかしたら由希は、義経と本当は恋人だったって、夢ちゃんに話していたりするのだろうか。
それで、よく似た人を好きになるなんて、やっぱり親子だね、なんて話になってるかもしれない。
まあ、俺の事を好きだって決まったわけでもないけど。
 達也「あーーーーーーーー!!!!ムニョムニョするぅーーーーーー!!!」
こんな事を考えていたら、何だか精神衛生上良くなさそうだし、飯でも食いに行くか。
俺はベットから起きあがると、部屋着のジャージのまま玄関に向かう。
 達也「誰かと会わないかなぁー」
俺はぶつぶつ言いながら、ドアをあけた。
 きらら「うわっ!」
・・・
 達也「おう」
あれ?
これは違うな。
 達也「あけましておめでとう」
 きらら「あっ、おめでとう、今年も宜しく」
 達也「いえいえこちらこそ」
・・・
 達也「ははは。どうしたんだ?もう帰ってきたの?」
 きらら「ははは。ちょっと暇だったから。実家にいても楽しくないし」
どうやらきららは、実家にいてもつまらないから早く帰ってきたと。
それでも結局暇で、だから暇つぶしに俺のところに来た。
まあそんなところか。
 達也「飯は食ったか?」
 きらら「朝ご飯は食べたよ」
 達也「じゃあ昼飯を食べにいくか」
 きらら「食堂?」
 達也「それしかないデソ?」
 きらら「私が何かつくろうか?」
・・・
俺って、典型的な日本人かな?
いや、嬉しい事を断る必要はないから、Noと言えない日本人とは違うか。
 達也「じゃあ、スパコンに材料買いに行くか」
 きらら「うん♪」
俺達は敷地内のスーパーコンビニに向かった。
正月でもやっているのはとても助かる。
 達也「ところでうららは?」
そう言えばうららがいない事に気がつき、気になって聞いてみた。
 きらら「ふーん。気になる?」
 達也「そりゃ、いつも一緒なのに、いないと違和感があるね」
ぶっちゃけ気になります。
 きらら「うららは小学生時代の友達と会ってるみたい」
 達也「ふーん」
それできららはやることもなく、先に帰ってきたわけか。
スーパーコンビニは普通にあいていた。
従業員の人も正月から大変だな。
俺はなんとなくレジを見た。
するとそこに立っていたのは、夢ちゃんと偶に一緒にいるところを見る、うちの学生だった。
 達也「あれ?君は・・・」
 女学生「え?えっと。あーーー!!ゲーム部の部長の夢の彼氏!!」
なんて事いいやがりますかこのアマは。
ちらっときららを見ると、驚いて固まっている。
 達也「いや、夢ちゃんのお友達の星崎です」
 女学生「ええわかってますよ星崎達也先輩。夢、素直じゃないですから」
全然わかってねぇ・・・
 きらら「ココって正月は、寮に残る学生がバイトしてるって言ってたね」
おっ!
きらら復活。
 女学生「そうなんですよぉ。お年玉を自分の力で。なんて可哀相なわ・た・し!」
これは、無視するところなんだろうな。
 達也「じゃあ、そういう事で」
俺はとりあえず料理の材料をみに行く。
 女学生「待ってください夢の彼氏!」
 達也「だから彼氏じゃねぇ!」
あっさり止められた。
 女学生「私にお年玉はないんですか?」
 達也「俺もまだもらうお年頃だ。チミに上げる玉はない」
 女学生「きゃー!夢の彼氏はセクハラ彼氏?」
 達也「だから彼氏ちゃう!」
つ、疲れる子だ。
 女学生「あっ!そうか。そちらの幼先輩が彼女なのですね?」
 達也「幼先輩?」
うむ。
この女、なかなか言いよるは。
 きらら「えっ?彼女?そうみえる?」
おいおい、幼先輩なんて、後輩から言われてますよ?
否定しないんですか?
 女学生「何だ。やっぱり彼女だったんですか。だったら言ってくれれば良かったのに。私、既に先輩が好きになってしまいました。どう責任とってくれるんですか!」
 達也「いや、幼先輩も彼女じゃ無いし、君も俺の事を好きになってないから」
 女学生「えー!どうしてそんな事言えるんですか。恋は突然一目惚れってありますよね?ああ、私の名前は谷今日子。よろしくね♪」
 きらら「誰が幼先輩なのよ」
きらら反応遅いよ。
それに手が、俺の首をしめてますよ?
 達也「きらら、息できない。後、谷さんの一目惚れは気の迷いだから。うっ!」
 きらら「きゃー!達也大丈夫?」
 今日子「うわちゃー!愛の力を見ましたは。死ぬほど愛するって、こういう事だったのね。後、今日子って呼んでね」
ああ、意識が・・・

5秒ほど意識を失った後、俺達は買い物を済ませて、俺の部屋に戻ってきていた。
 達也「それにしてもあの今日子ちゃんって、何者なんだろう?」
 きらら「元気で可愛い子だったね。達也の事好きだって言ってたし、気になるでしょ?」
なんとなく棘のある言い方するなぁ、きらら。
 達也「いや、可愛いとも思わないし、俺の事を好きだって言うのも嘘だよ」
あの言い方なら、間違いなく嘘だ。
 きらら「でも一目惚れってあるから、本当にそうなのかもよ」
今日のきららは突っかかってくるなぁ。
 達也「一目惚れってありえないでしょ。相手の事もわからないのに好きになんてなれないよ」
 きらら「そんな事ないよ。私、達也が私の名前呼んでくれた時、ああこの人好きになれるって思ったもん」
 達也「え?」
 きらら「あっ!」
・・・
それって、きららは俺に一目惚れしたって事だよな。
もしくは好きになったって・・・
 きらら「あーでも、あくまで友達としてだからって、そういうわけでもないんだけど、なんていうかな1番じゃないっていうか」
きららが動揺してる?
俺も動揺してるけど。
この状況どうよ?
・・・
 達也「1番じゃない?」
 きらら「そうそう。私は達也好きだけど、私以上に達也の事好きな人がいるから。だから私は、運命の人の次に達也が好きだって事・・・ね?」
つまり2番だと?
 達也「ね?って言われてもねぇ」
きららは俺の事が好きだけど、きらら以上に俺の事を好きな人がいる?
うらら?
それは無いな。
じゃあ夢ちゃん?
そこまでは感じないんだよな。
とにかく、きららは俺を最高に好きではないから、恋人にはならないと、まあそんな事が言いたいのかな?
 きらら「私が言いたいのは、私は達也が好きだから、ずっと友達でいたいし、これからも楽しく遊べたらいいなぁって」
きららが上目使いで俺を見てきた。
これは俺も本心を言うべきなんだろうな。
 達也「ああ、俺もきららは大好きだし、ずっと友達でいたいし、これからも楽しく遊びたい。」
 きらら「うん。ありがと」
 達也「更には、幸せになって欲しいし、幸せになるために協力できる事があるなら協力したいし、チョッピリ独占欲と下心もある」
 きらら「えーーー!!」
 達也「でも、付き合いたいとかって気持ちは無いんだよね。不思議なことに」
ホントに不思議だ。
何故そう思わないのか。
それがわからない。
そして付き合っても絶対別れると確信が持てるんだ。
 きらら「うん。私もきっとそんな感じで、達也の事みてる。ちょっとヤキモチもやいちゃうくらいに」
なんだろう。
凄く心地良い。
きららはきっと、今の俺に近い気がする。
 達也「きららは・・・愛人!」
 きらら「えーーー!!!」
今日はなんだか、きららがホントに幼先輩に見えるな。
そして昨日と今日で、俺の中のピースが、かなり埋まってきた気がする。
 達也「まあ、これからもよろしくな」
 きらら「愛人ちゃうで、マブダチやで!」
きっと明日になったら、今まで以上の普通になっている気がする。
俺は確信していた。
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