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第五十九話 バレンタインデー

出場登録をした次の日、俺の携帯に、バトルグリード大会運営本部より電話がかかってきた。
ドリームダストを、シード参加させてくれるという事だったのだが、本人達がいやがったので断った。
まあ、はっきり言ってそんな物が必要無かった事は、直ぐにわかったが。
ドリームダストはほんの数日で、100戦100勝で、予選突破確定を果たした。
その後シングルも、夢ちゃんが99勝1敗、チリちゃんが98勝2敗でほぼ出場確実だ。
ちなみに夢ちゃんの1敗は、チリちゃんとの対戦、今回は皆、別のゲーム機でやっているので、身内対決もあり得る。
当たりたくなければ、登録する時間をずらせば良いのだけれど。
しかし今回の対決は、数字ほど楽勝ではなかった。
みんな打倒ドリームダストでかなり練習しているようだ。
ドリームダストですらも、5敗くらいはしていてもおかしくなかった。
それでもちゃんと勝ってしまうところが強いって言えば強いんだけど。
で、その他はと言うと・・・
まこちゃんは、シングル予選で苦戦している。
というか、おそらく本戦出場は難しい。
現在の順位が、312位。
出場者が10000人を越えている事を考えれば、かなり好成績だけど、この順位では出場は厳しい。
ダブルでは、吉田&新垣ペアは、もう完全に楽しみモードに入っている。
戦績は五分より少し良いくらいで、順位も真ん中やや上くらい。
他のチームは20位から40位くらいをうろうろ、運が良ければ1ペアくらいは出場できるか。
チームではブライトスターが意外に善戦しており、16位前後のボーダーラインだ。
で、チームダブルは人が集まらないと、なかなかできない事もあり、現在34勝2敗。
なかなか良い成績だ。
今の勝率を続けて100戦できれば、出場できるかもしれないライン。
現在の上位者の勝率で言えば、12位に入れる。
まあこんな感じなのだが、正直、他のゲームをする暇がなくて、こればっかりってのも辛かった。
でもこれからは、ボーダーライン辺りのを上げるか、チームダブルの戦いを重ねるかだから、少し余裕がでてきていた。
そんなある日、今日はバレンタインデー、だったようだ。
展開が早すぎるやんけーみたいなツッコミはうけつけない。
なんせココ1ヶ月はずっとバトルグリードだったから。
授業も行事も、特に話すこともなく、平々凡々な日常。
それでまあ、バレンタインデーまでいつのまにか時が流れていたわけで。
気がついたのは、教室に入った時。
きららにはチョッピリ豪華なチョコを貰い、新垣さんや沢田さんから20円チョコを貰った。
これだけ女子が圧倒的に多い学校なのに、3個ってのも寂しかったが、昼休みにはうららにも超豪華っぽいチョコを貰い、ほにゃらら先輩からエビフライを貰ったから、だんだんと気分が上昇してきた。
ってか変になってきた。
 達也「うらら、ほにゃらら先輩、ありがとう・・・」
俺は泣き真似をしてから、うららからのチョコの包装をといてゆく。
すると明らかになってゆく、豪華っぽいだけのチョコ。
そうなのだ。
うららから貰ったチョコはあくまで豪華っぽいだけ。
チョコ自体の大きさは5cmも無いのだけど、包装で、一辺が30cmの立方体に仕上げられていた。
はっきり言って、うけねらい、むしろいやがらせ。
 達也「うらら・・・これは・・・」
 うらら「愛だね。愛♪」
してやったりな満面の笑み。
しかしその笑顔を見てしまったら、俺は喜ぶしかないではないか。
 達也「あっ、ありがとう」
くぅー!
俺ってこんな素直なキャラではなかった予定だったのにー!
 達也「で、ほにゃらら先輩、エビフライってなんですか?」
ココはほにゃらら先輩に、やりきれない想いをぶつけよう。
 ほにゃらら先輩「愛デソ?愛?」
 達也「疑問符ついてるし、しかも全然愛なんてこもってないじゃないですか!!そこのおばちゃんが適当に作ったやつだし。先輩なら伊勢エビくらいよこしなさい」
俺は右手をほにゃらら先輩に向けてつきだした。
 ほにゃらら先輩「あ、生命線が短い。それに結婚遅そうだね」
 達也「だれが手相を見てくれと言いましたか?そっちのでっかいエビでいいですよ」
俺はほにゃらら先輩が、最後に食べようと楽しみに置いていたであろうエビフライを、躊躇無く捕まえて、自分の口に放り込んだ。
 ほにゃらら先輩「あ!私の大切な黄金エビが・・・これはホワイトデーが楽しみになったは。バックかなぁ~?財布かなぁ~?」
しまった。
お返しする日が存在していたなんて、すっかり忘れていた。
って、俺記憶喪失だから、それだけは忘れているフリをしよう。
うん。
 うらら「私も楽しみだよ。さっきすっごく嬉しそうにお礼言ってくれたし、きっと凄いもの貰えるんだろうなぁ。ちなみにホワイトデーは3月14日だからね」
うっ、読まれてる?
 達也「オレ、キオクソウシツネ。ホワイトだかアタマワイトーだか、シラナイネ」
 ほにゃらら先輩「ま、期待してないけどね」
 うらら「甲斐性なさそうだしね」
・・・
くそ。
ココまで言われたなら仕方あるまい。
 達也「くくく。俺からお返しを貰うことを、後悔しても遅いぞ」
 ほにゃらら先輩「あ、くれるんだ」
 うらら「わーい。ありがとー」
・・・
なんとなくはめられた?
つーか、なんでこの面子で昼飯食ってるのか、不思議じゃね?
てか、ほにゃらら先輩って呼ばれてる事、いい加減ツッコミいれろよ。

昼飯食って、午後の授業が終わり、俺はいつもどおり部室に向かった。
部室にはいつもの面々が集まり、ついでに舞と美鈴も来ていた。
 舞「はい。達也くんにも上げるね」
 美鈴「はい。達也ちゃんにも、上げるね」
同時に渡された。
どうやらチョコのようだ。
しかしこれは、お返し期待してるよ!ってメッセージとも受け取れる。
ココは受け取るべきか、受け取らざるべきか。
って、受け取るしかないんだけどね。
 達也「あ、ありがと。って、美鈴は部室なんかきて、受験大丈夫なの?」
美鈴は受験生だから、3学期になってからはほとんど顔を見ていなかった。
 美鈴「何いってんの?とっくに合格したよ?」
 達也「え?聞いてないよ?何時合格したの?」
 美鈴「言ってないし。とっくの前だよ」
・・・
 達也「じゃあ、最近来てなかったのは?」
 美鈴「バトルグリードで忙しいそうだったから」
ふむ。
なるほど。
全ての話をまとめると・・・
 達也「今日は合格祝いをするぞー!」
 一同「おー!」
こうして部活は、久しぶりにテレビゲーム以外の事をする事になった。

みんなそれぞれ久しぶりに部活らしいゲームをしていた。
美鈴と夢ちゃんとまこちゃんと舞は、麻雀、きららとうらら、それに吉田夫妻はトランプをしていた。
麻雀も部活らしいのか?
 達也「あれ?チリちゃんがいないな?」
俺は気になったので、きらら達に聞いてみた。
 きらら「ああ、なんかさっき、わすれてたよぉ~って言いながら、どっか行ったけど?」
 達也「ふーん」
まあ、何を忘れてたのか知らないけど、そのうち戻ってくるだろう。
 まこと「たっちゃーん。麻雀しようよー!勝ったらチョコあげるから!」
 達也「勝たないとチョコくれねぇのかよ!」
 まこと「えー欲しいの?しかたないなぁー」
・・・
いや、別にくれとは言ってないんだけど。
でもまあ、くれると言うなら貰うか。
俺はうれしさを隠して、チョコを受け取った。
うれしさを隠して?
これではチョコが貰えて嬉しいみたいじゃないか。
まあ適当にチョコを貰った。
うむ、こんな感じだ。
舞と変わってしばらく麻雀していると、チリちゃんが戻ってきた。
戻ってくると直ぐに俺に向かって突進してくる。
 知里「お兄ちゃ~ん!」
そう言って俺に抱きついてきた。
えっ?何?どうしたの?
 達也「あー」
なんだか周りの部員達の視線が嫌なんですが。
俺は頑張ってジェントルマン風に顔を戻した。
そこ、戻したじゃなくて作ったでしょ!なんてツッコミしないの!
 達也「どうしたんだい?」
俺はいつものように、優しくチリちゃんの頭をなでる。
ん?
頭に何かついてた。
俺があげたカチューシャなんだけど、そこにシールが貼り付けてあって。
よく見ると、「チョコ」と書いてあった。
・・・
これはどういう事だろう?
私を貰って!とか、私を食べて!みたいな感じ?
 達也「ええーーーー!!!!ち、ち、ち、ち」
 美鈴「達也ちゃんやらしい・・・」
 達也「いや、違うんだ。ち、チリちゃんが、チョコなんだよ」
 まこと「もしかして、私を食べて!みたいな?ええーーー!!!」
一瞬にして部室内の時が止まった。
まこちゃん、それ冗談にならないから。
 知里「あれ?シール、どこかについちゃった?」
そういうチリちゃんの手を見ると、チョコシールがいっぱい貼られた箱があった。
意味わかりませんが、どうやらこのシールが1枚カチューシャについてしまっただけのようだ。
ふー驚かせるなよ。
俺は、カチューシャについたシールを剥がして、チリちゃんに渡した。
 達也「はい」
俺は優しくチリちゃんに声をかける。
 知里「ありがとぉ~」
そらそうだ。
チリちゃんが、「私を食べてぇ~」なんて言うわけないじゃん。
 達也「でも、なんでそんなにシール貼ってるの?」
そう、それが疑問だ。
別にそんなにチョコシールを貼らなくても。
むしろ1枚も必要ないでしょ?
 知里「ん~。中身に自信が無いから、シールで主張しようかと思ったんだけどぉ~」
おそらくは、チョコを作ったのだけど、デキが悪くチョコに見えないから、シールでチョコである事を主張したというわけか。
 達也「大丈夫だよ。チリちゃんが作ったものなら、きっと大丈夫」
たとえ形が歪でも、チリちゃんが作ったものならきっと美味しく感じる。
これは自信がある。
いや、あることにしよう。
 知里「そうかなぁ~ありがとう~」
チリちゃんはそういって、箱を俺に差し出した。
なんであげる方が「ありがとう」って言ってるんだろう?
 達也「どういたしまして」
俺はとりあえずそう言って箱を受け取る。
 達也「あけても良い?」
 知里「うん。恥ずかしいけどぉ~」
チリちゃんは本当に恥ずかしそうだ。
そんなに恥ずかしいデキなのだろうか。
俺はドキドキしながら、箱を開ける。
他の部員も、いつの間にか息をのんで箱を見つめていた。
パカ!
箱を開けると、中には綺麗な茶色い大きなハートがあった。
あれ?
デキが悪いって言うか、最高のハート形チョコなんですけど?
 達也「綺麗にできてるね」
 美鈴「うん。知里凄いね」
 うらら「愛を感じるよ。私以上に♪」
 知里「そうかなぁ~チョコシールは必要無かった?」
 達也「うん」
てか、マジこんなに綺麗に出来てるのに。
あっ!
俺は、あの日の弁当を思いだした。
綺麗に作ってはいても、あれははっきり言って不味かった。
という事は、塩とか間違って入れているのかも・・・
しかし、ココで食べないわけにはいかない。
俺はココで食べなければいけないのだ。
そして不味くても、美味しかったよって言うんだ。
俺って紳士♪
 達也「いただきまーっす!」
俺は一気にかぶりつく。
 知里「え?」
バキっ!
何これ?かめない・・・
メッチャ堅いんですけど・・・
そして痛い・・・
 知里「それ、チョコの見本だよぉ。本物用意するの忘れたからぁ~とりあえず見本を渡そうと思ってぇ~」
チリちゃん、こんなの作る時間あったら、チョコなんて軽く作れるでしょ?
 達也「そ、そうだったんだ・・・あまりにも本物っぽかったから、ついかぶりついちゃった」
 知里「お兄ちゃん、いやしんぼうだねぇ~」
俺ってそうだったんだ?
納得できねぇYO!

部活が終わり、ひとり、またひとり帰ってゆく。
俺はまあ一応部長だし、偶には最後のチェックでもしようと最後までいると・・・
夢ちゃんも残っていた。
 達也「どうしたの?帰らないの?」
夢ちゃんは黙ったままだ。
うーん、なんだろう。
 達也「一緒に帰ろうか」
 夢「う、うん」
おおっ!正解だったようだ。
最近夢ちゃんの事がわかるようになってきたのかなぁ~
そんな気しないけど。
部室の鍵をかけ、俺達は家路に向かう。
って言っても、もう寮は見えてるけど。
 達也「今日は久しぶりに遊んだ感じだね。ってか、美鈴先輩の合格祝いは何処にいったんだろうって感じだったけど」
 夢「うん・・・」
なんだ?
この雰囲気は。
そうか!
夢ちゃんだけ、チョコを貰ってない事を考えると、マジチョコで告白?
俺はドキドキしてきた。
俺勘違い男だし、きっとそんなんではないはずだ。
 夢「あっ、あの!」
 達也「はっ、はい!」
やべ、マジ緊張。
夢ちゃんには、告白なんて絶対されないと思っていた。
そしてずっと、今のまま仲良くできると思っていた。
でも、やはりそんな事はなかったのか。
 夢「これあげる。チョコ、はずかしいんだけど」
 達也「いや好きだけど・・・って、恥ずかしいチョコ?」
・・・
夢ちゃんが差し出した、透明な袋の中には、やばげな感じのう○こが入っていた。
いや、チョコなんだろうけど。
う○こにしかみえません。
これを、俺に食えと?
 達也「くれるの?」
 夢「いらないなら、捨てていいよ」
きっと、一生懸命作ってくれたんだ。
ココは食べないとって、さっきもそんな場面があって、失敗したんだ。
人間学習能力があるのだよ。
ココはとりあえず貰って帰って、捨てるのがヨロシ。
あれ?俺の手が勝手に動いて、チョコを手にとって、俺の口に・・・
ん?うまい?
 達也「うん。美味しいよ」
 夢「ホントに?」
 達也「うん。チョッピリミントなストロベリーがいいね」
うん、ちょっと変わった味だけど、凄く美味しい。
てか、俺の好きな味が2つ入ってるなんて、チョーお得だね。
俺はドンドン食べて、寮の前に来た時には、全てが無くなっていた。
 達也「あーあ。もうなくなっちゃった」
マジ残念。
 夢「あ、まあ、気が向いたら、また作るよ」
いや、やばい。
照れる夢ちゃんがマジ可愛いよ。
俺は夢ちゃんの頭をなでた。
今日はいつもみたいに払いのけられなかった。
 達也「じゃあ、又明日」
 夢「うん。おやすみ」
 達也「ああ、一応、ホワイトデーには何かおかえしするよ」
 夢「別に、どっちでも」
 達也「うん。じゃあ何かあげる。おやすみ!」
 夢「おやすみ」
最後に、今日一番の夢ちゃんの笑顔だった。
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