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第二十八話 新たな再会と知る想い

大好きだけど忘れたい。
忘れたいけど忘れられない。
そんな風景、そんな時間、そんな人。
おそらくはみんな持っている。
そんな人との再会は、俺に何を伝えるのだろうか。
山下さんが寮を出て数日。
出ていく人がいるって事は、入ってくる人がいるって事で。
別れは出会いの始まりなわけで。
俺は、新しい寮の管理人に会って驚いた。
目の前にいる女性は、紛れもなく俺の初めての女性、初めてつきあった女性、初恋と言っても一番しっくりくる女性。
体だけを求めて付き合ったわけではない。
わかってはいたけど、罪悪感に負けて別れた元彼女。
後藤由希。
俺は知らない振りをして、挨拶した。
 達也「はじめまして。よろしくお願いします」
色々な感情を必死にこらえて、俺はそれだけを言った。
向こうは、ただの1人の学生だと見ているのだろう。
当然だけど、ただ普通に挨拶をかえしてきた。
 由希「こんにちは。こちらこそよろしくね」
由希の笑顔を見て、俺は悲しくなった。
あの頃の笑顔とは違う、儚げな笑顔。
俺と別れた後、どんな人生を歩んできたのかわからないが、苦労してきたのではないかと思われた。
こんな元彼女。
おそらく今の俺が一番会いたくなかった人かもしれない。
俺の独り善がりだ。
でも俺は、今の現実を見なくてはならない。
なんとなくそう思った。
それでも見ていられず、俺は視線を逸らした。
ずっと気がつかなかったが、今の俺と同い年くらいの女の子が立っていた。
直ぐ近くにいたのに気がつかなかったなんて、俺はそうとう動揺していたのだろう。
由希はそれに気がついていないようだが、横にいたその子は、なんだか不審な目で俺を見ていた。
俺は慌てて話しかけた。
 達也「えっと、君は?」
俺は今できる最高の笑顔を作った。
 その子「・・・」
返事は無かった。
俺は気がついた。
自分の名前を前に言うのが礼儀だよね。
俺は言い直した。
 達也「俺は星崎達也。君の名前は?」
そういうと、今度はこたえないといけないと思ったようで、少し視線を逸らしてからこたえてくれた。
 夢「後藤夢。管理人の後藤由希の娘だよ」
なるほど。
言われてみれば似ているし、あの頃の由希にも似ている。
少し人見知りが激しいところなんてそっくりだ。
感情の無いしゃべり方も。
美鈴先輩とは違う。
夢ちゃんの喋り方は感情が有るけどひとつの感情に突出してる感じ。
つまらない、喋りたくない、面倒くさい、一言で言えば「アンニュイ」な喋り。
この感覚は懐かしい。
由希と会った時も、こんな感じだった。
それで俺は思ったんだ。
この子を笑顔にするぞって。
俺は再びその感情に包まれていた。
 達也「夢ちゃん、森学に入るの?」
 夢「そうなるみたい」
 達也「じゃあさ、ゲーム部に入らない?」
俺はいきなりだけど、本当にいきなりだけど、ゲーム部に誘っていた。
夢ちゃんは、「わからない」それだけこたえて、由希と部屋に入っていった。

夏休みも終盤、RPGもやっとの事で完成した。
今日は部室で、RPG完成パーティーと、まこちゃん誕生日パーティーが一緒に行われていた。
 達也「まこちゃんおめでとう」
俺はそういうと、ポケアニカードを1枚わたした。
もちろんプレゼントだけど、特にそれように包装しているわけではない。
しかしまこちゃんは大喜びだ。
 まこと「たっちゃんありがとー!これ超レアカードじゃん!」
そうなのだ。
俺のあげたカードは、何かのイベントでしかもらえないレアなカード。
ゲームにはあまり使えないカードなので、さほど人気は無いけれど、コレクターならほしがるから、そこそこの値がつくカードだ。
 達也「部屋にあったから」
まあ達也の部屋にあったわけで、どうやって手に入れたのかわからないけど、あげても問題ないだろう。
 達也「欲しければ他にもあげるぞ」
俺はそう言って、ゲームには使えないけどレアなカードが入ってるファイルを、まこちゃんにわたした。
 まこと「マジでー!」
まこちゃんは我を忘れる喜びようでファイルを受け取ると、パラパラとページをめくった。
その姿は実に子供っぽくて可愛い。
俺は目を細めて見ていた。
その時、まこちゃんが急に子供から大人の表情になった。
開いた一ページを、じっと見つめていた。
 達也「どうした?」
俺は思った事をそのまま口にだした。
するとまこちゃんは、ページが見えるようにこちらに向け、1枚のカードを指さした。
「ピカネズミ」の絵が描かれたカードだった。
俺の記憶が正しければ、店舗で行われる大会で優勝した時にもらえるカード。
数が出回っているので、価値はほとんどない。
店でも200円くらいで売られているカード。
そのカードがどうしたというのだろう。
 まこと「これ覚えてない?」
まこちゃんはそのカードを見つめながら聞いてきた。
 達也「ごめん。覚えてないや」
 まこと「そっか。残念」
残念と言いながら、少し笑顔で、でもかなり寂しそうな顔をしていた。
だから俺は聞かずにはいられなかった。
 達也「まこちゃん。もし良ければ話してくれないかな」
俺は心の底から知りたくて、思い出せるなら思い出したかった。
 まこと「これね。たっちゃんが、やっとの事で大会に優勝した時にもらった物だよ」
そう言って、ファイルからそのカードを取り出した。
俺はそれを受け取る。
 達也「そっか」
そう言われると、なんだかそんな気がしてきた。
 達也「それだけ?」
受け取って思ったのだが、まこちゃんの表情からそれだけでは無いように感じたのだ。
まこちゃんは少し驚いて顔を赤くしていた。
何かある。
確信をもった。
 達也「思い出したいから、教えてくれない?」
 まこと「うんー。実は今となっては思いだしてくれない方が良いような気もするんだよね」
意味がわからなかった。
今の俺が、初めてまこちゃんに会った時、まこちゃんは忘れられている事にショックを受けていたはずだ。
しかし今は、忘れている方が良いと言う。
 達也「そう言わずに教えてよー」
俺は少し子供みたいにつめよって、目をウルウルさせてまこちゃんを見上げた。
気持ちとしてはね。
 まこと「気持ち悪いよたっちゃん」
突き刺さるような冷めた目で見られた。
でも直ぐに笑顔になり、そして少し頬を赤らめて話してくれた。
 まこと「中学の卒業式の日、私たっちゃんを呼び出したんだ。話があるって」
俺はまこちゃんの反応から、この後の話をだいたい予想できた。
 まこと「で、告白したんだ。しても引っ越す事が決まってたし、その後どうこうするつもりも無かったけど、とりあえず言いたかった。」
ありがちな話。
これを誰か知らない人から聞かされていたら、俺はもしかしたら非難していたかもしれない。
バカだよねって。
でも、まこちゃんを見ていたら、それは凄く大切で、凄く気持ちが伝わってきたから、非難も否定もできない。
むしろ肯定していた。
 まこと「たっちゃんひどいんだよ。冗談は顔だけにしとけって」
 達也「俺、そんな事言ったんだ。ごめん」
俺では無いし、記憶も無かったけど、たとえ俺であってもそう言ったかもしれないし、そうしてきたような気がしたので俺は謝った。
 まこと「いいんだよ。別に。それが私たちの関係だったから。そう思ってたから」
俺達は、いや、星崎達也と岡島まことは、いろいろとわかりあえる、とても仲の良い2人だったのだろう。
そして許し合える。
 達也「ありがとう」
まこちゃんはとてもいい子だ。
 まこと「その時、それよりもお前ほしがってただろ?って、このカードを私にわたしたんだよ」
 達也「でも、このカードは俺が持ってたけど」
何故だろうと思った。
 まこと「うん。もらったんだけど、去年の6月頃だったか、たっちゃんに送り返したんだ」
 達也「何故?」
せっかくもらった、おそらく好きな男にもらった大切な宝物のはずだ。
それをどうして?
 まこと「送って、私の今住んでる場所を教えたかった。これを送れば、返事がくるんじゃないかって」
俺は何も言えなかった。
そうまでして、別れてしまった人とのつながりを絶ちたくなかったのだ。
それほどまで、俺は誰かを好きになった事があるのだろうか。
 達也「ごめん」
俺はただそれしか言えなかった。
 まこと「でもしかたないよね。直ぐに記憶喪失だったなんて」
そうなんだ。
おそらくはこれを受け取ってまもなく、記憶を失う事になったのだから。
俺はなにも言えず、視線を逸らした。
きららと目があった。
・・・
俺はココが部室で、みんながいる事をすっかり忘れてまこちゃんと話していたのだ。
 きらら「まこちゃん独占禁止法を主張します!」
 まこと「きゃー!おかされるぅ~」
まこちゃんはみんなに引きずられていった。
主賓なのに、みんなの玩具にされていた。
今まこちゃんが笑顔でいれる事が、本当に良かったと思った。
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