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第三十五話 本当の完成

ギャンブルに不正はつきものだ。
そしてその不正は、ばれなければひとつの技として認められる。
それはテストでも同じなのだろうか。
カンニングはばれなければ、そのままの点数を認められる。
俺も25年ほど前に、少しくらいはカンニングも経験した事がある。
だから少しくらいなら、見て見ぬ振りもしてしまうかもしれない。
しかし、この状況を見て見ぬ振りしてよいのだろうか?
まあ先生じゃないから、いいんだけど・・・
俺はきららを、正確には、きららの席に座って、数学の小テストうけているうららを見ていた。
今日は突然の小テスト。
夏休みの課題の復習的なテストだ。
まあ、宿題をきちっとやっていれば、解ける問題ばかり。
きららはその宿題を自分では解いていなかったけど。
そんなわけで、きららがいつも付けている、星のかたちをした髪止めをうららが付けている。
するとあら不思議、だれもうららだと気がつかないようだ。
数学の教師も、同じゲーム部の吉田君や新垣さんも、更にはクラスにいる時は仲良くしている沢田さんも気がついていないようだ。
小テストが終わり、授業が終わると、うららは直ぐに教室を出ていった。
俺は慌てて後を追うと、人が少ない事を確認してから、うららの耳元で小声で「おーい!」と言ってやった。
うららは一瞬ビクッとしたあと、こちらを振り返る。
 うらら「どうしたの達也。ちょっといそいでるんだけど」
きららのしゃべり方を真似しているようだ。
でも俺には通用しないのだ。
 達也「いいなぁ~うららに代わりに試験うけてもらって」
 うらら「えっ!達也。何いってるの?」
まだしらばっくれる気だ。
 達也「俺には通用しないよ。別に先生に言ったりしないし」
うららはようやく認めて、ため息をついた。
 うらら「なんで~クラスの子も先生も、誰も気がついてないと思ったのにー」
いつものうららの笑顔だ。
 達也「なんでだろう。雰囲気でわかるんだよね」
長きにわたり研究したから。
 うらら「ふーん。って、はやくきららと入れ替わらないといけないからー」
うららはそう言うと、少しだけ手を振って廊下を走っていった。
確かに似てるけど、ほらやっぱ違うよな。
後ろ姿を見ていた。
トイレに寄ってから、俺は教室に戻った。
既にうららと入れ替わったきららがいた。
 達也「よっ!きらら!久しぶり!」
俺がそういうと、腕を捕まれ教室の後ろに連れて行かれた。
なんか腕を組まれてるみたいで、ちょっと恥ずかしい、いや、嬉しいのですが?
 きらら「内緒だからね!てか、なんでばれるかなぁ」
きららはばれた事がショックなのか嬉しいのか、そんな複雑な表情をしていた。
 達也「俺様の目はごまかせないのだよ。きららの事は全てお見通し。神と呼びたまへ」
俺の言葉を聞いたきららは、驚いた顔をしていた。
やべ。
これって、神村の時に使ったネタだった。
 きらら「昔、義経先生にも言われたよ。神と呼びたまへ。神村だけになって」
きららは、たまたまネタが同じだったくらいに思ってくれたようだ。
俺は息を吐いた。
 きらら「男の人で私たちを区別できるの、お父さんと義経先生と、達也だけだね」
きららは嬉しそうに俺をみていた。
 達也「そうなのか?お前達ってもてそうだし、ちゃんと見ている男ならわかりそうだけどな」
言った後、これだと俺が、きららを毎日見ているって言っているようなものか?
少しやばいと思ったが、きららは気にしていないようだった。
 きらら「もてないよー!でも卒業式の日、私もうららも同級の男の子に告白されたんだけど、どっちも間違って告白してきたんだよ?ひどいよね」
・・・
そいつら、ホントに好きだったのか?
好きならちゃんと見分けろよな。
ちょっと腹が立った。
いつの間にか、クラスメイトがひとり、俺達のところに近づいてきていた。
 沢田「お二人さん、仲が良いわね。付き合ってるとか?」
興味津々な視線だ。
またイヤな事を言うな。
こんな事を言うのは、どうしても俺は肯定できない。
 きらら「付き合ってるわけないじゃない!達也だよ?」
きららはいつもの調子でこたえた。
表情も変わらない。
 沢田「ホントに?」
俺の顔をのぞき込んでくる。
面倒くさい。
 達也「きららだよ?」
俺はきららのペースに合わせた。
 沢田「なんだ。つまんないね」
そういうと沢田さんは、笑顔で他の友達のところに歩いていった。
全く、きららだったから良かったようなものの、俺の事が本気で好きな子だったらどうするつもりなんだよ。
ため息が出た。
生まれ変わる前、こんな事で相手がその気になって、実際に付き合うに至った子もいた。
もちろん俺はこんなんだ。
よくわからずに付き合って、当たり前のように別れた。
他人の関係を、他人がかき回さないで欲しい。
そう思った。
 きらら「否定しない方が良かった?」
俺が落ち込んでいるとでも思ったのか、それとも軽い冗談なのか、きららがそんな事を言ってきた。
こんな事を聞かれても、俺は困る。
 達也「嘘はダメだからそれでいいんだよ」
俺は余裕の笑顔を作ってそうこたえた。
付き合っていない事を肯定はしているが、否定できる可能性を残すような返事をしてしまった。
はっきりしないのは、俺の悪い癖なのだろうか。
でもわからないから仕方がない。
ただ言える事は、きららなら別に付き合う事に否定する要素は全く無い。
しかし付き合う決め手も無いという事。
うららだって、おそらくそんな感じ。
苦笑いした。
生まれ変わっても、何も変わっていない。
チャイムの音が聞こえてきた。
俺達はそれぞれの席についた。

放課後、ゲーム部の面々は部室に集まり、皆で作ったRPGをプレイしていた。
正確には、夏休みに作った「私たちの冒険」に、夢ちゃんが少し修正を加えたやつをプレイ中だ。
 達也「夢ちゃん凄い」
俺は素直な言葉が口に出た。
どういう事だろう。
世の中にはこんなにも天才が溢れているのだろうか?
いや、俺の見方が変わったのだろうか。
先生だった頃、数多くの生徒を見てきた。
それぞれそれなりに個性もあったけど、先生からの目線だと、こんな気持ちになる事はほとんどなかった。
俺が生徒とゆっくり付き合って、しっかりと見ていなかっただけだろうか。
今俺の周りにいる人達は、先生だった頃にもつき合いがあった子達もいる。
なのにこんな事を思うのは、星崎になってからだ。
美鈴はまあ、そこそこ賢い生徒だと思っていたけど、今ほど尊敬できた記憶は無い。
今の俺から見れば、美鈴は絶対将来何かする子に見える。
チリちゃんもだた大人しい子だった印象だ。
しかし勉強に興味を持てば凄い努力で知識を取り込むし、プログラムなんかも軽くやってしまうほど頭の回転も早い。
前に作った弁当だって、粘土みたいだと思って吐いてはしまったが、ただ細工に力を入れすぎて、味付けに意識がいっていなかっただけ。
アレは芋だったかこしあんだったかで作る、和菓子だったんだよな。
とにかく、興味さえ持てば、どんな分野でも成功してしまうのではないかと思うくらいの天才に見える。
きららとうららも、特になにかあるわけではないけど、テストを入れ替わってやるなんて、なかなかの大物な感じがする。
そして夢ちゃん。
たった2日で、あのRPGを、おそらくは完成系に近い状態にしてしまった。
今プレイしているのはきららの作った最初の部分だが、ちょっと強引に見えた心理描写が、凄く自然な表現に変えられている。
これを見て思う。
きららは日頃、ラブロマンスだとか言っているけど、言うほど好きではなかったのかと思ってしまう。
それくらい夢ちゃんの修正が凄いという事なんだ。
展開も、演出も、全て前のが悪かったんじゃないかと思ってしまう。
みんな同じ気持ちのようだ。
ただ無言でゲームを楽しんでいた。
放課後の部活だったので、序盤の少しの部分しかできなかったが、それだけで、このゲームが本当の意味で完成した事を確信していた。
 きらら「それにしても夢ちゃん凄いね」
 達也「それ、俺が言った」
 うらら「凄いのは、何度凄いって言ってもいいんだよ」
 まこと「うん。凄いとしか言えないし」
 吉田「アレをたった2日でやったんでしょ?」
 新垣「寝ずにやっても無理だよ」
 達也「そうだよな。夢ちゃんちゃんと寝てるの?」
 夢「うん。昨日徹夜したから、今日は3時間寝たよ」
 達也「少な!俺は1日9時間寝ないと眠いのに!」
 きらら「それは寝過ぎかと・・・」
 知里「そ?私は12時間寝たいかなぁ~」
・・・
俺は思いました。
チリちゃんと夢ちゃんを、足して2で割れば丁度良い感じになるのではと。
 達也「じゃあ今週末の土曜の部活は、これを最終チェックして、コンテストに送る事にする。おそらくこれでいいと思うけど」
ゲームの成果。
夢ちゃんは夏休みいなかったけど、これでこれはみんなのゲームだ。
なんだか嬉しかった。
土曜日は、舞も含めて最終チェックし、舞の意見も取り入れて完成させた。
今度こそ、ゲーム部みんなの作品になったと思った。
次の日には俺がポストに投函しておいた。
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