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第八話 ゲーム部顧問

今日も放課後になると、俺は第二コンピュータルームに行って、ゲーム同好会の活動をしていた。
えっちゃんこと山下さんにもらったゲームも、今時の子達には物珍しいようで好評だった。
そして今は、自分達で作ったテーブルトークゲームをプレイしていた。
このゲームは、ゲームマスターがゲームの世界や設定、冒険を考えて、その他のプレイヤが冒険をする、さいころ振ってするロールプレイングゲームだ。
このゲームを一から作るには、ゲームバランスに気を付けないといけないし、魔法、スキル、モンスター等の設定がとても難しいものだった。
でもまあ美鈴先輩やチリちゃんは、ある程度の知識と経験があるから、みんなで作れば数日でプレイできるレベルの物ができあがっていた。
マスターは美鈴先輩だった。
 美鈴「ゴブリンのフレイムダガーによる攻撃の、炎のレジスト成功は20面ダイスで18以上よ」
 知里「え~そんなにぃ~炎の戦士チサトなのにぃ~」
 達也「名前でレジストはできんだろ?」
 まこと「でも、将来炎属性目指してるんだから、少しくらい良いんじゃない?」
 きらら「だったら私は、炎と氷と雷と地の魔法使いキララにするよぉ~」
 うらら「じゃあ私は神様ウララで・・・」
はっきり言って、設定も判定もあったもんではないゲームになっていたが、それはそれで皆楽しんでいた。
結局この日の冒険は、ゲームバランスが悪いのか、プレイヤがヘボなのか、全滅して終わった。
当然後の理由だろうけど。
早くにゲームが終わってしまったので、残りの時間は雑談をしていた。
 美鈴「やっぱ部室と予算がほしいよねぇ」
 知里「確かにゲーム機とかPCがほしいですぅ~」
 達也「だな。高鳥姉妹とか吉田君は、しらないゲーム多いから、資料としていろいろ欲しいね」
 きらら「そおだよぉ~」
 うらら「うんうん。個人のお小遣いで買うのもつらいしね」
 美鈴「だったら顧問をしてくれる先生をみつけないとね。締め付けの緩い優しい先生で」
俺達の雑談は、ゲーム同好会を正式な部にする為の緊急会議に移行していた。
 達也「確かに、予算でゲームを買うとか言ったら、いい顔しない先生多そうだしなぁ」
 吉田「だろうな。俺自信こんな同好会が存在できる事におどろいているからな。部活となると相当理解ある先生がいないと」
そんな先生滅多にいるはずもなく、更にはいたとしても、既にどこかの部の顧問になっている確率が高かった。
みんながため息をついた時、知里ちゃんが言いにくそうに提案した。
 知里「あの~私の担任の舞先生なんてどうかな?」
俺の心臓が跳ねた。
いや、体も少し跳ねたかもしれない。
とにかく驚いた。
しかし同時に、もしそうなったら良いかもと、期待する気持ちも出てきた。
よく考えれば、これほどの適任もいないじゃないかとも思うし、何故名前が今まで出てこなかったのか不思議だった。
 美鈴「確かに舞ちゃんは良いかもね。でも、義経ちゃんの事思い出しちゃうね・・・」
美鈴先輩の言葉で、舞の名前が出なかった意味が何となく分かった。
おそらく、神村舞が神村義経の妹であることをみんな既に知っている、そして神村義経が死んでいることを知っているのだろう。
チリちゃんがココにいるのだから、知ってて当然だしな。
そしてこれだけ神村義経の関係者が集まっている。
舞に気をつかっている部分も多いのだろうと思った。
 吉田「どういう事?話がよくわからないんだけど?」
 まこと「私もわかんない。その舞先生だと何か問題あるの?」
 きらら「うん・・・」
みんなだまり込んでしまった。
場の空気から、吉田君もまこちゃんも、これ以上聞かなかった。
でも話した方が良いと思ったのか、美鈴先輩が話し始めた。
 美鈴「うちら、えっとチリと私は、池田中学ゲーム部だったんだ。そしてうららときららも池中出身」
美鈴先輩はそう言いながら、池中出身ではない、俺と吉田君とまこちゃんの顔を順番に見た。
 美鈴「で、舞先生の兄の義経先生は、池中ゲーム部顧問で、うららときららの担任だった事もある」
 吉田「へぇ~だったら問題はなさそうだし、むしろ適任なんじゃないんですか?」
確かに。
ここまで聞いた事が全てだったら、問題も無いし、コミュニケーションもとりやすい先生だからむしろ適任だ。
でも・・・
 美鈴「でもね。去年、お兄さんの義経先生、亡くなられたんだって・・・だから・・・」
ここまで言ったところで、皆、舞先生の名前を出さなかった意味が分かったようだ。
やっぱり舞に頼むのは酷かな。
俺はそう思った。
そう思ったのだが、俺は美鈴先輩を見て考えが中断した。
泣いていた。
あの美鈴が?
俺の知る美鈴は、常に沈着冷静、あまり感情をださず、何を考えているのかわかりにくい生徒。
その美鈴が泣いていた。
 美鈴「義経ちゃん・・・」
素直に、だたただ義経だった俺が死んだ事を悲しんでくれていた。
俺は素直に嬉しく、そして申し訳ない気持ちだった。
気がつくと、高鳥姉妹は声を出して泣いていた。
チリちゃんも、ヒックヒックいっていた。
まこちゃんももらい泣きか、目を潤ませていた。
俺も一緒に泣いていた。
俺は心の中で皆に感謝した。
だから俺は言った。
心の中で「ありがとう」と・・・
そして声に出して言った。
 達也「舞先生に頼んでみようよ。今のみんなを見ていれば、きっとそれが一番良いと思う」
俺は会心の笑顔で、そしてはっきりと皆につたえた。
反対する者はいなかった。
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