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第四十六話 集まる期待

ご都合主義。
なんて素晴らしい言葉だろう。
それで全てがうまくすすむなら、それはそれで良いのではないだろうか。
うまくいくならね。

文化祭も終わったある日、皆でゲーム雑誌を見て驚いた。
そこには、RPGつくったるでコンテストの受賞者の名前が出ていた。
金賞。
森ノ宮学園高校ゲーム部。
確かにそう書かれているように見える。
 達也「うーむ。きらら殿。なんて書いてあるか読んでみてくれんかね」
 きらら「金賞。私達」
 知里「そんな事書いてないよぉ~!森ノ宮・・・」
俺は直ぐにチリちゃんの言葉を遮る。
 達也「なるほど。やはり俺達が金賞なのか」
 知里「だからぁ~森ノ宮学園・・・」
 美鈴「信じられないね」
ナイス美鈴。
 知里「森学ゲーム・・・」
 まこと「やったーーーー!!!」
 知里「・・・」
ちょっといじめすぎたな。
 達也「チリたん。チリたんの言う通り、森ノ宮学園高校ゲーム部が金賞だ!」
 知里「うん。やったねぇ!」
うんうん。
世界の平和は、森が半分以上焼かれたところで守られた。
 うらら「それにしても、バトルで勝って、RPG作成で金賞なんて、第三者が見たらご都合主義的展開だよね」
 達也「うん。まあ、そういう展開でないといけないわけではないから、少し違うけどね」
これに何かの意図があるなら、これはご都合主義の何物でもないだろう。
普通自分の周りにこれだけの幸運が続く事なんて、まずありえないのだから。
それとも、俺がそういった幸運に、あまりにも縁が無かっただけなのだろうか。
まあ幸運であるわけだから、たとえご都合主義であったとしても万歳だ。
どんな無理な展開でも、最後はやっぱりハッピーエンドがいいでしょ?
 吉田「なんにしても、僕たちの努力が認められたわけだから、嬉しいよね」
 新垣「うん。それに10万円もらえるんでしょ?でもそのお金はどうするの?」
新垣さんの言葉に、皆が俺を見た。
 達也「今回のは、全部部費にいくよ。正規の部活だったからね」
そらそうだ。
ゲーム機もソフトも全部学校のお金で買ったものだ。
まあ個人で持っていて、それで部屋でもやる人がいたけど、今回はみんなで山分けってわけにもいかない。
 美鈴「当然ね」
 まこと「ラジコン買って、みんなで遊びたかったかもー」
 夢「うん。でもどうせ、ゲーム買うお金になるんでしょ」
まあ夢ちゃんの言うとおりだ。
 達也「そうだな。安いPCをもう一台と、ゲームソフトを買おうかと思っているけど」
テレビモニタやゲーム機は、バトルグリードの副賞でもらったから、今は2台ずつある。
が、ゲーム部は実績を残してしまったから、学校側からの期待も大きくなってるし、今の状態だと少し不安だ。
PCも2台にして、後はゲームソフトを充実させる方向で決めていた。
 きらら「PCかぁ。確かに必要な時に、わざわざ持ってくるのもしんどいもんね」
今までは、PCが2台以上必要な時は、個人のPCを持ってきていた。
ちなみにゲーム部員は、皆PCを持っている。
てか、今の高校生で、持っていない人も少ないのではないだろうか。
 美鈴「部室の機材が充実するわね」
 吉田「なんとなく、ゲーム部の部室って感じになってきたって感じ」
 うらら「今までだと、他の部活っと対して変わらなかったもんね」
皆、10万円の使い道に関しては納得のようだ。
そんな話をしていると、部室のドアをノックする音が聞こえた。
皆がそちらに視線を向ける。
 達也「はーい」
俺は立ち上がり、ドアを開けた。
そこには校長先生と舞、それにICレコーダーとデジカメを持った人が2人立っていた。
 ICレコーダーを持った人「すみません。eゲーム雑誌社の者ですけど。インタビューお願いしたいんですけど」
なんと。
どうやら今回のコンテスト優勝についての記事を書くために、雑誌社が話を聞きにきたようだ。
もしかすると、バトルグリードの件もあるかもしれない。
俺は皆を振り返って聞いてみた。
 達也「いいか?」
 美鈴「良いんじゃない?」
ゲーム部の活動も、ゲーム雑誌見てるだけだったし問題無い。
 達也「では、どうぞ」
校長は舞に、後はよろしく、と言って去っていった。
俺は雑誌社の2人を招き入れる。
中央の席に座ってもらって、それを半円状に囲む形で部員達も座った。
 雑誌社の人「では、最初は部長さんに話を聞かせて頂きます」
ひとりはICレコーダーを構え、もうひとりがデジカメを構える。
どうやら動画撮影のようだ。
少し緊張した。
 雑誌社の人「まず、RPG作成コンテストでの金賞おめでとうございます」
 達也「はいありがとうございます」
 雑誌社の人「今の気持ちを率直にお聞かせください」
 達也「あー嬉しいです」
 雑誌社の人「自信はありましたか?」
 達也「あーまあ、もしかしたら程度には」
 雑誌社の人「そうですか。どうもありがとうございました」
って、もう終わりかよ!
でもまあ、あまり色々聞かれても、特に面白い事が言える気がしないし。
俺は、終わったみたいなので、立ち上がろうと腰を浮かせた。
しかし、直ぐにまた座る。
 雑誌社の人「では次に」
なんだ?
まだあるのか?
 雑誌社の人「バトルグリードの事でお聞かせください」
なるほど。
こっちもあるのか。
なんとなく、こっちが本命なんだろうと思った。
前回の月刊eゲームでは、バトルグリードの事がかなり書かれていた。
あれは凄く好評だったと聞いている。
 雑誌社の人「まずは部長さん。おめでとうございます」
 達也「ありがとうございます」
 雑誌社の人「それでは「ドリームダスト」のお二人にお聞きしたいのですが」
俺にはそれだけかい!
 夢「は、はい」
 知里「はいぃ~」
 雑誌社の人「まずはおめでとうございます」
 夢「はい」
 知里「ありがとうだよぉ~」
 雑誌社の人「1000連勝を達成した時の気持ちは?」
 夢「夢みたいでした」
夢ちゃんだけに夢みたいって。
 達也「ぷっ!」
夢ちゃんに睨まれた。
 知里「おわっちゃったぁ~って感じでしたぁ」
 雑誌社の人「ほう。自信があったみたいですね」
 夢「はい」
 知里「普通ですぅ~」
その質問に対して普通って何?
 雑誌社の人「テレビに出演して、その後ネット上ではアイドルのように扱われているお二人ですが、どんな気持ちですか?」
 夢「はあ。まあ。嬉しいです」
 知里「みんな本人がどんな人か知ったら、ガッカリするんじゃないでしょうかぁ~」
いや、そんな事はないと思うぞ。
本人知っていたら、きっともっと大騒ぎだ。
二人ともマニアからの需要が凄く高そうだからな。
この先、どこかで何かが間違ったら、二人はゲームアイドルとかって人気者になっても不思議ではないと思う。
 雑誌社の人「ディフェンディングチャンピオンとして、次の目標とか、今後の事についてどう考えてますか?バトルグリードに関しては、2も出るって話ですし」
 夢「別に」
 知里「とりあえず楽しく遊ぶぅ~」
 雑誌社の人「あなた達を目標に頑張る人とか、RPGにしても、対抗意識を燃やしている人が大勢いると思うのですけど」
 夢「面倒」
 知里「しらないよぉ~」
その後も色々な質問が続き、30分してようやく雑誌社の人は帰っていった。
 達也「ふぅ~おつかれ」
俺は二人の頭をなでた。
夢ちゃんは恥ずかしそうに俺の手をどけ、チリちゃんは嬉しそうにしていた。
 美鈴「なんだか、私達、もしかして凄い事やっちゃったのかもね」
 まこと「それはそうでしょ。できて間もないゲーム部が、全国に名を轟かせるなんて」
 きらら「だよね。これからの部活は、遊び感覚でできないかも」
 吉田「確かに、今後も何かそれなりの実績は残さないといけないような気もしてくるよ」
 新垣「プレッシャーだね」
なんとなく、俺はこういった状況は好きではない。
野球少年が甲子園を目指すために努力する。
自主的にやるなら、それはそれで素晴らしい事だし、俺も試合を観るのは大好きだ。
でも俺達は、こういった賞を取る為に、ナンバーワンになる為に部活しているわけではない。
もし世間の期待にこたえる為だけに、今後頑張ったとして、その後に何が残るのだろう。
チリちゃんなら、その後プログラマーに進む道があるかもしれないが、夢ちゃんはどうだ?
勉強もせずにゲームを極めて、その後の道は?
1000連勝達成の時に、舞が言っていた校長先生の言葉。
今後のゲーム部の活躍にも期待しているよ、と。
期待するのは勝手だけど、その後の責任はとれるのだろうか。
こんな時こそ、教師というのは正しい道しるべを示してあげないといけないのではないだろうか。
ゲームアイドルなんて可能性もあるけど、腕利きのプロデューサーとの出会いが必要だろう。
人間、ひとりでできる事には限界があるのだ。
良い出会いが無いと、何事も成すことが出来ないのが、今の世の中である事を俺は知っている。
 達也「夢ちゃんって、プロのゲーマー目指してるの?」
 夢「そんなのやるわけないじゃない。遊びだから面白いのに」
俺は決めた。
ご都合主義的な展開が続いたが、この後もそんなものには期待できないのだ。
本人がそうしたいならともかく、そうではないのだから。
 達也「10万円の使い方だけど、変更します。前からみんながやりたがっていた、ラジコンを買います!」
 まこと「えー!それだとゲームの練習とか作成とか、あまりできないよ?」
 吉田「何か実績をつくるなら、ゲームもPCも有った方がよくない?」
まあ、賞を取るためとか、実績を残す為にやるならそうなのだろう。
しかし。
 舞「賞を取る為に部活をするなら、それはそれで良いと思うよ。でもみんなは、もっと楽しい事をしたいんでしょ?」
雑誌社の人を見送りに行っていた舞が、いつの間にか部室に戻ってきていた。
流石は舞だ。
俺の気持ちをわかっているようだ。
 舞「とにかく、みんなはやりたいようにやった方が良いよ。部費でラジコンくらいなら、言い訳もできるでしょ。それにあなた達が手に入れたお金だし」
 達也「それに、ゲームって、遊びじゃん?」
少し周りの期待を意識し始めていたみんなだったが、すっかり元のみんなに戻った。
 まこと「じゃあさ。早速ネットで買おうよ!」
 達也「まだ10万もらってないから」
 まこと「えー!!借金できないのぉ~」
 達也「わがままだな。無理無理!」
 舞「私が立て替えてもいいよ?」
・・・
 まこと「せんせーありがとー!」
 吉田「早くやってみたかったんだよね。ありがとうございます」
 きらら「じゃあ早速今から買う?」
 うらら「ネット銀行にお金いれておかないと」
みんな嬉しそうだった。
もちろん、テレビゲームが嫌いでも、作るのが嫌なわけでもない。
ただ、みんなラジコンをやってみたかった。
それだけ。
 達也「舞。悪いな」
俺はこっそりお礼を言った。
後日10万円分のラジコン10台とパーツが届いた。
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