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中継地点殺人事件

朝から俺と嬢ちゃんは、どうしても一緒に行きたいと云って聞かないミケを連れて、先日俺が確認したインターネット中継地点へと向かっていた。
王都までインターネットが繋がっていないという事は、此処で何らかの問題が発生している可能性があった。
道の途中、村人たちにも確認したが、王都方面への通信は遮断されているようだった。
「昨日からなんかおかしいなー!今日は全くつながらんわ。はっはっは!」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
この辺りの人はインターネットが繋がらない事を特に気にしてはいないようだ。
まあ農作物の取引交渉とかそう頻繁にあるわけでもないし、今は収穫時期でもない。
とりあえず今の所は大丈夫だろう。
こやって聞いて歩いていたが、何処も内容は同じだった。
「もうすぐ中継地点だけど、大丈夫かなぁ」
「そう願いたい‥‥けど‥‥多分‥‥何かあったと‥‥思う‥‥」
魔力が暴走してマジックボックスが爆発したとか、そういう話は極々偶にだがある話だ。
でも中継地点のマジックボックスはしっかり管理されいるし、そんな事が起こったとは思えない。
やんちゃな冒険者に壊されたとか、魔獣に襲われて破壊されたとか、可能性としては色々考えられる。
盗賊はあまりこの辺りにはいないようだが、絶対とは言い切れない。
俺は色々な可能性を考えながら、その中でマシな可能性を期待するのだった。
だが、結果は最も最悪な状況だった。
「これは酷いな」
「うん‥‥一体何が‥‥あったんだろう‥‥」
「みんなくびちょんぱだね。凄い綺麗に斬られてるのだ」
「ミケ、血が嫌いなんだから、あまり見ない方がいいぞ」
俺がそう言っても、ミケはなんだかんだチラチラと見ていた。
怖いものでも見たくなる気持ち、分かるよね。
グロ画像とか、見たら気持ち悪くなると分かっていても、やっぱり見てしまったり。
中継地点の建物の中には、首を綺麗に切り落とされた死体が、何体も転がっていた。
抵抗しようとした形跡も少しはあるが、どれも反撃できずに殺された感じに見える。
誰がやったかは分からないが、中継地点の職員をこれだけ楽に殺しているのだから、相当な使い手である事は間違いないだろう。
うちのギルドは強いのが揃いすぎているが、姐さんレベルはギルド関係の職員としては必須条件。
となると敵は、朝里ちゃん並みか、或いは俺以上の使い手である可能性もある。
「この血の跡、武士が敵を斬った後に、刀をシュッって振って血を飛ばした後に似てるのだ!」
ミケよ。
どこでそんな知識を得たのだ?
前世で時代劇か何かテレビを見た事があったのだろうか。
でも確かに言われてみればそんな風にも見えてくる。
「刀‥‥が武器で‥‥たぶん合ってる‥‥と思う‥‥」
「ああ」
この世界の武器は色々あるが、斬る事をメインにしている武器というのは意外に少ない。
普通皆が想像する剣は、斬るというよりもかち割るのが主な目的だ。
斧や何かと同じと言える。
或いは刺す事が目的の武器も多いが、斬るものは割と少ない。
これだけ綺麗に首を斬れる武器となると、日本刀か忍者刀くらいだろう。
矛や薙刀系武器でも斬る事はできるが、これだけ綺麗に斬れるとなると、やはりまず思い浮かべるのは日本刀という事になる。
それに室内で振り回すには、矛や薙刀では長すぎる。
「どうする?このまま放っておくのもアレだけど、現場を下手に触るのも問題あるし、此処はこのままにして、東にある中継地点の確認に行くか」
「そうだね‥‥ここだけなら‥‥インターネットが‥‥完全に‥‥止まる事は‥‥ないはず‥‥」
俺たちは来た道を一度引き返し、そこから東へと向かった。

進む先は、俺が初めて通る道だった。
近いうちに外回りで来る予定だった最後の場所だ。
改めてまた来るのも面倒なので、俺は少しペースとを落として、その外回り任務をついでに済ましておこうと思った。
インターネットの事は、別にそんなに急ぐ事もないだろう。
俺は軽く考えていた。
しばらく進むと、谷の底を歩いてるような場所になった。
この辺りの北側には魔王の城があるので、ちょっと自然の要塞チックになっている。
軍をこんな所に進めてきたら、必ず罠が待ち受けていそうな場所だった。
そこから先は荒野になっていて、直ぐにこちら側の中継地点の建物が見えてきた。
中継地点の建物は何処も似ていて、だいたいそれと一目て分かる。
そもそも人が全くいない場所にポツンと一軒建っているのだから、分からない方がおかしいくらいのものだった。
「さて、ついたか。こちらも嫌な予感はするな‥‥」
人の気配が感じられなかった。
近づくと、やはり予想通り、先に見た中継地点と同じような惨状だった。
「こちらも同じか‥‥」
「やっぱりくびちょんぱなのだ。それになんかさっきよりも気持ち悪くて吐きそうなのだ」
言われてみれば確かにそんな感じがする。
「こっちは‥‥やられてから‥‥時間があまり‥‥たってない‥‥」
よく見ると、血はまだ赤く、生々しかった。
「蘇生は‥‥無理か。魂は既に此処にはなさそうだ」
俺は蘇生魔法が使える。
しかしそれにはいくつかの条件があった。
一つは、体がある程度残っている事。
ファイヤ系魔法などで完全に消し炭になってしまっていては蘇生はできない。
もう一つは、魂がそこに留まっている事。
時間が経っていたり、魔法で強制的に魂を成仏させてしまったら、もう蘇生は不可能になる。
今回はとりあえず、魂が此処にないから無理そうだった。

俺たちは中を見て回った。
状況は似たようなものだった。
一体どういう理由でこんな事をしたのだろう。
犯人はおそらく同一人物。
或いはグループかもしれない。
俺は探偵でも刑事もないからその辺り調べられないけれど、これを一人でやったのならかなりヤバいヤツだと思った。
「あれ?マジックボックス‥‥これ‥‥やっぱり‥‥壊そうとして‥‥壊されてるよね‥‥」
「本当だ。刀で斬った後がある」
さっきの所では気が付かなかったが、明らかにマジックボックスが狙われた形跡があった。
ほとんど抵抗させないで殺せる達人が、誤ってマジックボックスを斬ったとは考えづらい。
「間違いなく、これはインターネットが繋がらないよう狙った犯行だな」
「そうだね‥‥早く戻って‥‥とりあえず姐さんに‥‥報告‥‥する‥‥」
「日が暮れる前に戻るぞ!」
俺たちは猛ダッシュでセカラシカの町へと戻るのだった。

戻ってから、俺は姐さんたちに報告した。
「やはり中継地点は何者かによってやられていました。職員皆首を刀で斬られていたように見えます」
「みんなくびちょんぱで酷かったのさ!」
俺とミケがそういうと、朝里ちゃんが少し驚いた表情をしていた。
でもすぐに元の表情に戻り、いつもの笑顔に戻っていた。
だから俺は、朝里ちゃんが驚いた事はすぐに忘れていた。
「南の中継地点が‥‥数日前に‥‥東の中継地点は‥‥昨晩‥‥襲撃されたみたい‥‥だった」
「反撃した形跡も少なく、中もそんなに荒れていなかったので、犯人はかなりの達人だと思います」
俺たちは思う所すべてを姐さんに報告した。
「分かった。ありがとう。とりあえずこの事は領主に報告しておくわ。おそらく領主から王都へ使いを出すはずよ。でもそれだと復旧までには一週間くらいはかかりそうね」
「早く復旧が必要なら言ってください。俺なら1日で往復できると思いますから」
「急ぐ理由ができたらお願いするわね」
こうしてとりあえずこの件は、領主や王都のギルド協会の対応待ちという事になった。
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ドクダミ

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