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2013年11月4日【月】19時43分21秒
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仲間

害虫駆除中心、いや、G駆除を中心に活動する日々が続く中、自分の能力の開拓も行っていた。
というか、鍛えれば結構いろいろできてしまう事がわかってきた。
生命力を使う事。
生命力に関わる事なら、アイデア次第で色々できる。
Gを動かす事は、中でも一番簡単な事のようで、Gの聴覚や視覚に意識を繋ぐと、覗きや盗聴のような事まで出来る事がわかった。
さらには、まだそれほど大きな事はできないけれど、昆虫程度なら自由に動かせる。
Gのように扱う事はできないけれど、言ってみればラジコンで動かす感じ。
しかしそれには、かなり自分の生命力のようなものが必要で、大きい生き物になるほど疲れるし難しい。
上手くいけば、人間だってコントロールできるような気もするが、流石にそれは無理だと誰かに言われた気がした。
それでもせめて、ネズミくらいは動かせれば良いなと思った。
そんな事を考えていたら、携帯の着信音が鳴り響く。
俺はすぐに携帯を手に取った。
携帯ディスプレイには、未登録番号からの着信を知らせる表示。
新規のお客様のようだ。
「はい、もしもし万屋イフです。」
「えっと、高橋さんですか?」
「ええ、そうですけど。」
どこかで聞いた事のある女性の声。
しかし、おそらくはほとんど話した事のない人のようだ。
誰だかわからない。
「えっと、喫茶メグミの、愛須と申しますが。」
愛須と聞いて思いだした。
先日G駆除とネズミ駆除をした、喫茶店にいた女性だ。
喫茶店の看板には「喫茶愛」と書いてあったけど、あれってメグミって読むんだ・・・
「はいはい、もしかして、またネズミがでましたか?」
Gが出る事はあり得ないし、電話してきた理由を考えれば、思い当たるのはそれしかない。
「いえ、違うんですけど。」
「では、別の仕事の依頼でしょうか?」
「はい。でも、とりあえず相談と言うかなんと言うか・・・」
なんだかはっきりしない物言いだ。
とりあえず、話を聞いてくれと言う事か。
「ええ、今話せる事ですか?だったらこのまま聞きますが。」
「いえ、是非一度、家へいらしていただきたいのですけど。」
ふむ。
電話では話せない事のようだ。
まあこちらも、そんなに仕事をしているわけではないし、今日は暇だ。
「では、これから伺いましょうか?」
「あ、はい、是非。」
「それでは・・・」
俺は電話を切ると、早速出かける準備をする。
一応いつも持ち歩くポーチに、Gを数匹忍ばせる。
まあ多少なら、離れていても呼ぶ事ができるが、Gが全くいない場所ってのも存在するからな。
俺は準備が完了すると、前に行った喫茶店を目指した。
自動車で30分ほどで、目的地についた。
前回来た時より、道がわかる分少し早い。
さて、今日は喫茶店ではなく、裏の自宅の方へと回った。
インターフォンを押すと、受話器に出る事なく、そのまま玄関が開けられた。
出てきたのは、先日店で会った、愛さん・・・
だったはずなのだけれど、服装が高校の制服だった。
「ええっ!」
俺は驚いて、声をだしてしまった。
何故なら、先日会った時は、二十歳くらいかと思うくらい大人っぽかったから。
「えっ!ど、どうかされました?」
「こ、高校生だったんですか?!」
俺は素直にそのまま聞いてしまっていた。
あまりに可愛くて、少し動揺していたから。
「あ、はい。」
普通にこたえられ、何も言う事が無くなった。
少し沈黙したが、普通に仕事の話すれば良いと気がつき、俺は落ちつて話した。
「えっと、で、話はどちらで?」
「あ、はい。では、中に入ってください。」
俺は促されるまま、愛さん宅へと入った。
玄関で靴を脱いだ後、そのまま正面に見える階段を上がる。
先に階段を進む愛さんのスカートの中が見えそうで、俺は少し視線をそらしながら上がった。
つれてこられたのは、どうやら愛さんの部屋の前。
「あのー・・・この中なんですけど・・・」
愛さんが、部屋に入る事を躊躇している。
俺は、既に気がついていた。
小さな生命反応が沢山ある。
俺は自分の能力で、生き物を特定する。
「蜘蛛・・・か。」
「えっ?!どうして?」
やばい。
つい言葉に出していたようだ。
俺は中の蜘蛛を一匹操作し、入り口のドアの近くに移動させて、少しだけドアを開ける。
すぐにその蜘蛛を外へと出した。
「ほら、此処にいたから。」
「ホントだ・・・」
どうやら上手くごまかせたらしい。
こんな能力、言っても信じて貰えないだろうけど、自ら喋って混乱を招く事もない。
だから俺は、できるだけ隠していく事にしていた。
「この中に相談の何かがあるんですね?」
「あっ!でも・・・」
俺は、愛さんが止めようとしているのを、聞こえないふりをして中に入った。
中には、すぐに沢山の虫がいる事がわかるほど、蜘蛛がいた。
おそらく100匹はいるだろう。
しかし、俺が入っても、どれも特に逃げる感じではない。
「えっと、ちょっとみんな、隅にいってくれる?」
愛さんが声をかけると、蜘蛛は部屋の隅に向かって移動し始めた。
「もしかして・・・」
「はい・・・前に害虫駆除して頂いてから、蜘蛛が私のまわりに集まりだして、もしかしたら・・・」
俺と同じような能力を持つ者が、他にいるなんて。
蜘蛛は既に、部屋の隅に集合していた。
家蜘蛛以外にも、少し大きめのもいた。
「ゴキブリ駆除の後に集まったから、これを俺に?」
こんな能力、わかったとしても、普通人には話さないはず。
それがほとんど面識のない俺だと尚更だ。
「えっと、ゴキブリ駆除の時、ゴキブリやネズミを殺している様子ではなくて、話しても、蜘蛛を殺さずにいてくれそうだったから。」
まあ、俺にとってのGと、愛さんにとっての蜘蛛は、きっと同じようなものだろう。
仕事では時々、何匹かのGには死ぬような事を頼んだりしたし、実際死んでたりするけれど、自分で殺すなんて俺にはできない。
「で、俺にどうして欲しいのかな?」
話すには、何かお願いがあるから話したのだろう。
「もうなれたのですが、やっぱりまだ一緒だと眠れなかったり、でも追い出すなんてできないし、どうしたら良いかと思いまして。」
このままでも、おそらくは大丈夫そうに感じた。
でも言われてみれば、前に会った時より少しやつれている気もする。
俺の能力も話してみようか?
マンションの部屋はまだ余ってるし、蜘蛛部屋を作っておいてあげる事もできるけど、まだ2回会っただけの人を信じて良いのだろうか?
「天井裏にいるように命令すればどうかな?」
何故か、愛さんが俺を見つめていた。
どうしたのだろう。
「この状況を見ても、驚かないんですね。」
言われて気がついた。
普通なら、まず部屋に入った時点でかなり驚くだろう。
でも俺は、既に中の状況を知っていたから、驚かなかった。
そして、蜘蛛への命令と、それに従う蜘蛛達。
それを見たら、更に大きく驚くはずだ。
でも俺は、既にこの能力を認めているし、普通に対処してしまった。
しらばっくれる事もできるけど、俺は誰かに話したかったのかもしれない。
同士に出会えて嬉しかったのかもしれない。
俺は話していた。
「俺も、実は同じ能力があるからね。」
「やっぱりそうなんですか。」
「えっ!?わかっていたの?」
「ゴキブリ、殺してないのにいなくなった。今までお父さんが色々試したのに、いなくならなかったゴキブリがだよ?だからもしかしたらって。」
なるほどなぁ。
まあ普通、これだけ見事にG退治できる業者もないからな。
飲食店でバイトしていた時も、数ヶ月ごとに調査と退治をして、何回も行って、やっといなくなるくらいだもんな。
「愛さんは、どうしてその能力に目覚めたのか、理由はわかるのかい?」
「わからないけど、夢はみました。蜘蛛の神様が、蜘蛛の能力を得られるって。」
同じか。
という事は、愛さんも蜘蛛を助けたか、それとも何かウィルスに感染したのか。
「最近、蜘蛛を助けたりした事はある?」
「ええ、前に来ていただいた次の日から、ブルーランドの方へ旅行に行っていたんですが、その時に。」
ブルーランドは、北極にほど近い、とにかく寒い国だ。
最近の温暖化により、永久凍土が溶け、一昔前より生活圏が広がり、最近旅行客に人気の島国。
「俺と同じだ。」
「高橋さんもブルーランドへ?」
「いや、俺は南極なんだけど、原因が同じって事。」
「この能力を得る原因ですか?」
「うん。」
俺は頷いてから、詳細を話した。
南極に行った事。
そこでGを助けた事。
愛さんの事はわからないが、未知のウィルスに感染していた事。
前々から思っていたのだが、未知のウィルスってのが、この能力に関係しているのではという事も話した。
新種のウィルスは、毎年色々と見つかっていたりするわけだが、完全に未知のウィルスってのはそうそうない。
二人の行った場所を考えると、最近永久凍土が溶けてきている場所だ。
氷の中にウィルスがあったのか?
強引な推測だが、なんとなく当たっている気がした。
他にも、俺の能力で命令できるのは、Gである事。
それを使って、現在仕事をしている事。
マンションにGを集めて飼っている事も話した。
ただ、西口悠二が若返って、高橋光一になっている事は伏せた。
これは国から止められているから。
「一応これは、他言無用でお願いしたいんだけど、良いかな?」
「はい。良かった。私だけじゃ無かったんで、少し安心です。」
愛さんは、どうやらこの能力を得た事が怖かったようだ。
確かに、ある日いきなりこんな能力に目覚めて、原因も分からなければ、宇宙人に改造されたとか、不安になるかもしれないからな。
ああ、それはないかな。
まあとにかく不安で、誰かに話したかったのかもしれない。
それでも、話したからと言って、不安は消えないだろう。
俺はもう死ぬつもりだった人間だから、未知のウィルスとか言われても、別に怖くはない。
しかしこれから人生いきてゆく人間にとっては、何時なにが起こるかもしれない恐怖が有るに違いない。
だから少しでも安心してもらえるよう、俺は言った。
「俺はもう1年以上になるけど、体の不調とか無いし、むしろ昔より快調なくらいだから、心配する事は無いと思うよ。」
俺は笑顔で愛さんを見た。
「はい。」
返事を返す愛さんが、出会ってから初めて高校生に見えた。
「じゃあ、これからも同じ能力を持つ仲間として、何か有れば連絡を取り合おう。」
俺は、名刺を差し出した。
「あ、持ってます。」
そう言えば、電話がかかってきていたんだ。
「そうだったね。」
「えっと、メール送ります。」
こうして俺は、同じような能力を持つ愛須愛さんと、情報交換をする理由で時々会うようになった。
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