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2013年11月4日【月】19時44分48秒
【(*´∇`*)】川柳と短歌を始めました。
2013年11月4日【月】19時43分21秒
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告白

俺の自宅への誘いに、鈴木は喜んで応じてくれた。
カエとメグミは気を使って、「少し何処かに行ってくるよ。」なんて言ってくれたが、そんな気遣いは無用だ。
カエとメグミもまた、俺にとっては大切な仲間であり、もう家族なのだから。
テーブルを囲んで椅子に座り、俺と鈴木は向かい合っていた。
それぞれの横に、カエとメグミも座っている。
もうここで冗談を言って、ごまかせる雰囲気ではない。
逃げ道はもうないという事だ。
自分で決めた事なのに、ただ大切な人に、大切な話をするだけなのに、俺は此処まで自分を追い詰めないと言えないのか。
約束を守る事、ただこれを自らの意思で破るだけだ。
約束を守らない人なんて、この世にはごまんと存在する。
それが駄目な事だと分かっていながら、平気で破る。
その代表的なのが政治家だ。
到底達成できないマニフェストを掲げ、人々に良い顔をして票を集め、当選したらマニフェストなんてあってないようなものだ。
もちろん、全てを守って欲しくて投票する人なんていない。
逆に守られると困る事さえある。
だからやらないマニフェストがあっても良いのだ。
理屈では分かっている。
今の俺の約束は、破っても良いはずの約束だ。
日本では人権が保障されているのだから。
でも、どんな約束でも、守ってほしい人がいるから約束なのだ。
約束した限りは守るべきではないのかと、やっぱりどこか思ってしまう。
一部の者の利益の為の約束は、最初から約束しなければ良いのではないだろうか。
俺は、施設から出る為に約束した。
俺個人の利益、いや人権を守る為に約束して、破る事によって、政府や山田に何か迷惑がかかるのか。
いや、鈴木になら話しても、誰にも迷惑にはならないだろう。
だけど今回のこの告白は、おそらくそれだけにとどまらない。
俺は、鳥かごから抜け出したいのだ。
西口悠二の幸せをつかもうとしているのだ。
この理不尽な世界を変えたいと思った。
こんな世界腐っていると思った。
でも、俺一人の力では、この世界を浄化するなんて、到底無理だと分かった。
山瀬さんは頑張っているが、マフィアの下っ端を捕まえて、悪い奴らを少し懲らしめるくらいがせいぜいだ。
俺が協力したとして、このままでは100年かかっても変える事はできないだろう。
何故なら、この腐った世界を作ったのが、この国の人々なのだから。
人間が作ったものなのだから、腐っていて当然。
欠点があって当然。
これを少しでも良くする努力をやめてはいけないが、ある程度受け入れる事も必要なのだと分かった。
だったらどうするのか。
みんながやっているように、この腐った世界の中で幸せをつかむしかない。
西口悠二だった俺が、分かっていたのに出せなかった結論を、今、出そうとしていた。
「話と言うのは・・・」
俺は何とか声を絞り出し、鈴木を見た。
すると鈴木は、俺の顔の前にサッと掌を向けた。
喋るのをストップしろという事だが、一体どういうつもりだろうか。
だがその疑問は、すぐに消えてなくなった。
「悠二なんだろ?」
鈴木の顔は、確信をもった笑顔だった。
俺は驚いた。
何故そんなにハッキリと、そう思えるのだろうか。
確かに本人だし、30年以上も前の俺と同じ姿ではある。
でも、30年以上も前の記憶なんて、そんなにあるものでもない。
写真を見ても、髪型も違えば、服装も違う。
確信なんて持てるはずないじゃないか。
だいたい、人が若返るなんて、常識としてありえるものではない。
そんな都合のいい力があれば大騒ぎだ。
俺は少しの間、声がでなかった。
すると鈴木が続けて喋ってきた。
「どうして分かったのかって思ってるだろ。当たり前だろ。30年以上も親友やってて、俺がお前を間違えるわけがないじゃないか。悠二はなにか?俺が若返って目の前に現れたら、俺じゃないと思うのか?」
言われて思った。
確かに鈴木が鈴木であるならば、俺はきっと分かるだろう。
今なら、たとえゴキブリになったって分かると思う。
「ふっ!」
なんだか笑えてきた。
そうだよな。
そうなんだよな。
俺達は親友だったんだ。
何を悩む事があったのだろうか。
俺が言わなくても、これくらいわかっちまうんだよ、鈴木なら。
「なんだか悩んでいたのがバカみたいだな。」
さっきまでの重い空気はもうなかった。
「ま、どうしてこんな事になったのか、話せないなら話さなくて良いが、とにかく、悠二が生きていて良かったよ。」
鈴木の目から少し涙が流れていたが、顔は笑顔だった。

その後、俺と鈴木、それにカエとメグミも含めて、色々な事を話した。
俺が西口悠二である事。
どういうわけだか、若返ってしまった事。
政府の秘密機関によって、若返った事について色々しらべられた事。
施設を出る条件として、定期検査と守秘義務を守る事。
こんな事が公になると、世間が大騒ぎになるので、西口悠二は死んだ事になり、高橋光一として生きている事。
そして、ゴキブリの力、生命力の力の事を。
「どうしてそんな力が身についたんだろうな?」
鈴木の軽い気持ちの質問だった。
こんな突拍子もない話を、疑っている様子は全く無い。
だから俺は普通に、思ったままにこたえる。
「南極に、永久凍土の溶けた場所を見に行ったんだ。そしたらそこにゴキブリがいてさ。そこでゴキブリと接触したのが、何かの原因かもな。」
この能力を得た人間、俺とメグミとカエの共通点。
一つは、永久凍土の溶けたところに行った事。
そして、少なからずその虫に好意をもっていたり、助けたりした事。
言いかえれば、その虫と接触した事、とも言えるかもしれない。
後、俺の場合には、何やら未知のウィルスが見つかったとかって話もある。
これらから、永久凍土内に閉じ込められていた何かが、俺達に感染し、それが原因で、何かしらの力がついたと考えるのが、一番分かりやすそうだ。
虫が特定されるのは、もちろん接触があった為。
「南極には、やっぱり行ったのか?」
鈴木がなにやら少し驚いていた。
「ああ。正直に話すと、マジで死んでやろうと南極に行ったんだ。永久凍土の溶けた場所が見たかったってのもあるがな。」
俺の言葉を聞いて、鈴木が何やら考え込んでいた。
もしかして何か知っているのだろうか。
そう言えば、鈴木は動植物や微生物なんかの研究をしている。
と言っても、どちらかというと、健康を補助する菌だとか、美容に良い成分を持つ動植物だとかを研究しているので、ウィルスなんかは関係の無い分野ではある。
という事は、なにか別の話題なのだろう。
「俺が動植物なんかの研究をしているのは知ってるよな。」
「ああ、なんど聞いても、言ってる事はわからんがな。」
こうやって普通に話すのは心地いい。
正直、話の内容なんて、どうでも良いと思った。
「地上の動植物の研究ってのは、世界ではかなり進んでいてな。調べられる場所ってのは、ほぼ誰かが調べているわけだ。」
「ほうほう。」
「で、今、俺達の世界で注目されているのが、永久凍土の溶けた地域なんだ。」
なるほど。
もしかしたら鈴木も行ったとか、同じ時期に南極にいたとか、そういう話かな。
「何か未知のウィルスでも見つかったか?」
「よく分かったな。」
俺の何気ない一言に、鈴木が少し驚いた顔をした。
鈴木の言葉、そしてその表情を見て、俺も冷静でいられなくなった。
「もしかして、すぐに死滅して消えてしまうとか、そんなウィルスなのか?」
冷静な俺が見れば、かなり白々しい演技に見えたかもしれないくらい、俺は動揺していたかもしれない。
「そうだ。もしかして、悠二も何か知ってるんだな?」
「ああ、俺を調べていた施設の山田が、そんな事を言っていた。」
「なるほどな。」
鈴木は少し笑っていた。
この笑顔はどういう意味だろうか。
この時の鈴木は、俺には何かに恐怖しているように見えた。
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