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第三話 北都映里はできる魔法使いです

魔石の形と付属魔法には関連性があった。
全てではないが、尖った形をした魔石は攻撃系魔法が付いている事が多く、逆に球に近い形のものは回復系魔法が付いている事が多かった。
これはカットした後にも言える事で、攻撃魔法が付与されている魔石を球に近い形にカットする事で、回復系魔法に替わる事で証明できた。
ただし百パーセントでは無いし、無理に変えても魔石の魔力が弱まる、或いは多くの場合は死んでしまうので、それをする意味はほぼ無いと言えた。

拳魔の朝は、十時に起きる所から始まる。
寝るのは十二時なので、実に睡眠時間は十時間だ。
見守る神としては、早く起きて何かやらかしてくれないかと期待するのだが、まあしっかり睡眠をとらないと駄目な体質のようだしそこは我慢しよう。
拳魔の生活スペースは地下にある。
二階にも一応生活スペースはあるのだが、古いしこの世界の建物なので、正直拳魔には居心地が良くなかった。
日本で暮らしている時はエアコンもあったし、隙間風が入ってくるような事もない。
それが当たり前になっている拳魔には、そういう生活空間が必要だった。
その割に森などで野宿する時は平気なのは、結界魔法で守っているからか。
そんなわけで、地下の工房から更に地下へと繋がる隠し扉が拳魔の家にはあった。
それは拳魔にしか見つけられず開けられないよう魔法がかけられてある。
そこから入ると下へ降りる螺旋階段があって、中心は人が通れるだけの穴があった。
工房のすぐ下には寝室など生活空間があり、その下には風呂が作られてあった。
更に螺旋階段で下りるか、或いは真ん中の穴から飛び降りる事で、地下二キロの所にある実験場に行けるようになっていた。
実験場は、魔法や魔石効果のテストに使う為の場所だった。
全部拳魔のチート魔法で作ったもので、耐久性能等は万全であった。
起きてすぐに拳魔は工房で研究を始める。
その為に異次元に保管してある魔石を取りだすのだが、正直自分でもどんな魔石を持っているのか全てを把握していなかった。
というのも、戦闘でドロップされた魔石は、自動回収魔法で回収しているからだ。
取りだして確認していくのも、時間のある時にする事の一つとなっていた。
「思っていたよりも色違いの魔石ってドロップしているものなんだな」
拳魔は少し嬉しそうに作業をする。
チェックしていない魔石を順番に確認していった所、色違いの魔石は総じて魔力や効果が高かった。
「色違いはボスクラスのモンスターのドロップなのかもしれない」
拳魔の魔法によるアイテムの自動回収は、手に入れた順番にドロップアイテムを異次元に収納していた。
その順番通り見ていくと、モンスターの群れ毎に一個の色違いがあるかないかといった割合であった。
しかしどれも、先日依頼を受けてカットしたオーガの魔石の色違いほど、飛び抜けて良い物ではなかった。
「どれも雑魚モンスターのばかりだもんだなぁ」
拳魔は自らモンスターを狩りに行って、自分で強いモンスターの色違い魔石を手に入れたいと考えたが、直ぐに気持ちを改めた。
「取りにいくのは依頼して任せる。今は研究が優先だ」
今、拳魔には取り組んでいる研究があった。
魔石の組み合わせによる効果アップだ。
例えば魔力を発する魔石と、攻撃力アップの魔石を組み合わせると、魔力によって攻撃力アップの効果が大きくなる事が分かっている。
ただし組み合わせる魔石には相性があって、必ずしも効果アップにつながるとは限らない。
概ね同じモンスターの魔石同士なら上手くいく事が多いが、そうでない場合はほとんど上手くいかない。
その中で偶に上手く行く組み合わせがあるのだが、そういう場合は同じ魔石同士以上の効果を発揮する。
何故そういう事が起こるのか、組み合わせに法則があるのか、色々な組み合わせを試してそれを解き明かしたいと思っていた。

拳魔は食事もしないでただ研究に没頭していた。
いや拳魔は食事なんてしなくても生きていけるから、それは分かるんだけどね。
それでもほら、たばこ休憩だとかなんだとかで、少しくらいは休むでしょ。
そんな少しの休憩もせず、拳魔は夢中で魔石を触り続けた。
そんな時だった。
まだ開店していない店に客が訪ねてきているようだった。
店のドアに設置してある呼び鈴が鳴らされ、それが魔法で工房や下層へも聞こえるようにしてあった。
拳魔は千里眼の魔法で様子を確認した。
するとそこには、一人の女性が立っていた。
魔法使いのようで、手には背丈ほどのスタッフを持っていた。
女性は再び呼び鈴を鳴らした。
「はいはいでますよー」
拳魔は並べた魔石をそのままに、一階へと上がり、バックヤードからカウンターの裏を通って店に出た。
入口のドアは硝子で中が見えるようになっているので、拳魔から外に立つ女性が確認できた。
身長はそんなに高くはなく、拳魔よりもかなり低い。
拳魔自身そんなに高くなくて、百七十センチに届かないくらいだが、その女性は百五十センチくらいで、どちらかというと少女といった感じだった。
その少女は拳魔に気が付くと、外らか声をかけてきた。
「開けて欲しいのさ!というかなんでこんな時間なのに営業してないのさ?!普通開いてる時間なのさ!」
特に怒っているという様子はなかったが、何故かちょっと必死さが伝わってきた。
拳魔は慌てて入口の鍵を開け、ドアを押した。
ドアが開いて、その少女は少し安心したような笑顔を浮かべた。
神様的に見て、少しドジっ子属性を持っているようにも見える子だった。
拳魔は相手が同年代以下の女の子に見えたので、普通に話しかけた。
「どうしたの?なんか急ぎで困った事でもあった?」
完全に子供を相手に話す時のような話し方だった。
「急ぎじゃないのさ。ただ、ちょっと仕事のお願いに来ただけなのさ」
普通に笑顔で話す少女は、特に問題など何もないと言った感じで答えた。
開店時間外に無理やり開けてもらった事など、微塵も意識する所がなかった。
拳魔にはそれが逆に面白くて、目の前の少女とただ普通に話がしたいと感じた。
「仕事の依頼か。どんな依頼なの?」
「えっと、なのさ‥‥自己紹介がまだだったのさ。私は|北都映里《ホクトウツリ》っていうのさ。君は拳魔くんなのさ!」
映里という少女の云う通り、『確かに店の主は拳魔くんですがそれが何か?』みたいな空気が一瞬拳魔を覆った。
『どうして名前を知っているの?』なんて事は一切思わなかった。
すぐに拳魔は我に返り、話を続けた。
「だよ。映里っていうのか。その映里はどういう仕事の依頼をしに来たのかな?」
「仕事の依頼だったのさ。えっと、このスタッフの此処にハメる魔石の相談なのさ」
映里は持っていたスタッフを拳魔の前に突き出した。
そのスタッフはかなり使い込まれた感じのする年代物といった感じで、木でできたスタッフからは魔力が感じられた。
拳魔の云い方をすれば、このスタッフは生きているといってもいいだろう。
ただ、本来宝石が埋め込まれていたであろう所に、宝石の姿はなかった。
「このスタッフは‥‥」
拳魔にはこのスタッフが何なのか、どうして宝石が付いていないのか、瞬時に理解する事ができた。
このスタッフは、これから魔法使いになる新人魔法使いが使うモノであり、魔法を極めたモノが使うとその役割を終える為、宝石を受け付けなくなるものだと理解した。
つまり、このスタッフを使っているのが目の前にいる少女ならば、映里は魔法使いとして超一流であるという事を表していた。
でも拳魔は信じられず改めて尋ねた。
「このスタッフは映里が使ってるものなの?」
「そうなのさ!子供の頃に師匠のおばあちゃんに貰ったものなのさ!でも壊しちゃったので直したいのさ」
これで間違いなく、目の前のドジっ子属性を持っていそうな少女が、マスタークラスの魔法使いであるという事が拳魔の中で確定した。
でも必死にスタッフの事を語る映里は、とてもそんな魔法使いには見えなかった。
それにこのスタッフの事も分かっていないわけだし、おそらく自分がそれだけの魔法使いである事も自覚していないだろう事は明白だった。
「これは壊れたんじゃなよ。もう映里にはこのスタッフが必要ないって伝えているんだ。このスタッフは、魔力がスムーズに流れるように、魔力に圧力をかける効果を持っているんだ。でも今の映里は、魔力を無駄なく最効率で使える魔法使いになっていて、逆にその圧力のせいで付いている宝石を壊してしまうようになった。だからたとえダイヤモンドの硬度があっても、もうこのスタッフは付けた宝石を破壊してしまうだろう」
「へー‥‥そうなんだ‥‥」
拳魔が説明すると、映里はボーっと拳魔の顔を見つめていた。
『この人なんかよく分からないけどスゲー』みたいな事を思っているようだった。
拳魔は見つめられて、少し照れて人差し指で頬をかいた。
間が持たなくなって拳魔は話しかけた。
「そんなわけで、新しいスタッフを買ったらどうかな。そのスタッフは卒業だ」
拳魔がそう言うと、正気に返った映里はハッキリと返した。
「それはしたくないのさ!この子は私の相棒なのさ!なんとか使いたいのさ!それで知り合いに相談したら、此処なら何とかしてくれるかもしれないって言ったのさ」
映里は少し必死だった。
拳魔に縋りつく勢いだった。
そこまで思い詰めた様子はなかったが、できればなんとかしたいという気持ちが伝わってきた。
そう言われて、拳魔も少し何とかしたいという気持ちが生まれてきた。
というよりも、このスタッフにどんな魔石なら付けられるのか、付ける方法はあるのか、付けられるのならどんな効果がいいのか、考え出すとワクワクせずにはいられなかった。
『知り合いに相談』という所は完全にスルーしていた。
普通、そこ気になるよね。
アニメ小説の展開的にはそこに話が移る所だったが、そんな事は一切なかった。
「魔石でも構わないんだよね?だったら付けられる可能性はあると思う」
「ほんとなのさ!?お願いするのさ!」
やっぱり映里は必死そうだった。
でもなんというか、やはりそこまで必死には感じられなかった。
「このスタッフにはどんな効果を持たせたいの?いや、元々どんな効果を持っていたの?」
「魔法のパワーアップなのさ!エイリちゃんに魔力を送ると、ドンドン強くなっていったのさ!」
いきなりエイリちゃんとか言われたが、拳魔はこれがスタッフの名前であるとすぐに察した。
『もしかしたらこの子イタイ娘かもしれない』と思ったが、拳魔は嫌いではなかった。

さて、スタッフによって魔法を強くするには、いくつかの方法がある。
宝石に魔力をあらかじめ貯めておき、それを開放する方法。
生きた魔石が元々持っている魔力によって上乗せする方法。
この二つはどちらも術者の魔力に魔力を上乗せしてパワーアップする力技のパワーアップだ。
他にも、魔力の流れをスムーズにして、魔力効率を高める方法がある。
或いは魔力の圧力を上げて高める方法もあるが、これは映里の場合既に限界値に達していて、これ以上は必要ない。
というかそれが逆にネックになっている状態だから抑える必要がある。
最後に魔法によって魔法の威力を高める方法もある。
『次に発動する魔法の効果を二倍にする魔法』なんかがそうだ。
これを使った後に、更に同じ魔法を何度も重ねてパワーアップする事もできて、倍々に威力を上げていく事もできる。
ただこの方法の場合、何度も魔法を使うから、本来使いたい魔法を使うまでには時間がかかり、弱い魔法に使っても無駄に魔力を消費するだけに終わるから、使う魔法はある程度魔力を必要とする魔法に限られた。
更に途中で邪魔をされる事もあるし、重ねた魔法に術者が耐えきれなくなり、魔力暴走で自分自身にダメージを受ける可能性もある。
それを代わりにやってくれるのがスタッフであり、映里の話からも、おそらくエイリちゃんはこの効果を持っていたと予想できた。

「そんなわけで、魔法の効果を上げる魔法が元々付いていたんだと思う。ただし、弱い魔法を撃つ場合にスタッフの効果を使うと、無駄に魔力を消費する事になるけど、今まではどうだった?」
魔法の効果を高める魔法は、強力が故に元々魔力消費量が多い。
そんなのがデフォルトで発動してしまうと、当然無駄に魔力を消費してしまう。
例えば魔力を二十消費する攻撃魔法があったとしよう。
この魔法の威力を二倍にする場合、単純に魔力量を二倍の四十にする事でそれは可能である。
しかし魔法の効果を二倍にする魔法を使う場合、その魔法に魔力量が二百必要だとしたら、二倍の魔法を放つのに二百二十の魔力が必要になる。
つまり、魔力消費量二百までの魔法を放つのなら、スタッフ無しの方が効率的というわけだ。
「小さい頃の事はよく分からないのさ。ただ言われてみると、確かに弱い魔法を放つ場合、スタッフの効果を使った時の方が魔力を消費してたのさ」
映里の言葉を聞いて、拳魔は間違いがないと確信した。
元々このスタッフについていた魔法は、魔法強化の魔法だと結論付けた。
拳魔は考えた。
単純にその効果を持った魔石、或いはダイヤモンドを付けたとしても、このスタッフは宝石を破壊してきたのだろう。
破壊を回避するには何か工夫が必要だ。
魔力圧力を落とすというのが最初に考えられるが、そんな勿体ない事は拳魔としてはしたくない。
魔石の強化という事も考えられるが、ダイヤモンドでも駄目だし、そもそも強化するにも魔力が必要になるわけで、これも非効率。
となると方法は一つしか思い浮かばなかった。
「魔力分散しかないか‥‥」
ただこの方法でやるには、かなり難しい所があった。
元々考えられる方法としては、魔力圧力を下げる魔石と、魔法効果を高める魔法効果を持った魔石、この二つを上手く組み合わせる事ができれば良かった。
しかし分散となると、分散するのだから最低限あと二つの魔石が必要になり、三つを上手く組み合わせる必要が出てくる。
するとあと一つ、効果を付与する事になり、そこも相性の良い効果を考えなければならない。
でもこの難問も、拳魔は楽しいと感じていた。
「一度映里が魔法を使う所を見てみたいな。できれば何段階かに分けて」
拳魔の目には、映里はそれほど凄い魔法使いには見えなかった。
この世界では、魔力がダダ洩れして強さがバレてしまうような面倒な設定はしていない。
俺が設定した世界なのだからなるべくシンブルにしている。
だから拳魔は、使い手である映里の能力を見て、このスタッフをどうするか決めたかった。
「この辺りで私が魔法を全力でぶっ放せる所なんてないさ。ちょっと遠くまで行ったとしても、人がいたらマズいのさ」
映里がそういうのだから、おそらく相当な魔法を放てると想像できた。
それでもやはり拳魔は実際に見てみたかった。
「いい場所があるんだけど、他の人には知られたくない場所なんだ。絶対に内緒って事ならそこでお願いしたいんだけど」
拳魔は地下の実験場に案内するつもりだった。
本当は誰にも知られない方が良い場所だし、これがきっかけで自分が日本人だとバレるかもしれない。
でも映里なら大丈夫なのではないかと拳魔には思えた。
「そんな所があるのだ?だったら案内するさ。誰にも話さないと約束するのさ」
両手を上げてそう話す映里は子供みたいだった。
実際はもう成人していて、拳魔より年下だけれど十五歳だった。
拳魔はこの時既に十六歳になっていた。
不老だから見た目十五歳だけどね。
ちなみにこの世界の成人は十五歳で、こういったファンタジー世界のお決まり設定だった。
「じゃあこっちに来て」
「あいあいさーなのさ!」
映里は一つ敬礼してから、拳魔の後に付いていった。
カウンターの後ろを通りバックヤードに入ると、そこから階段で地下へ行く。
映里はキョロキョロと部屋を確認しながら、特に恐れる様子もなく拳魔の後に続いた。
「ここは工房なのだ?でもこんな所で魔法はぶっ放せないのさ」
「此処じゃないよ。更に地下があるんだ」
拳魔はそういうと、何もない壁に手を当てた。
すると隠し扉が開かれ、地下へ向かう螺旋階段が見えた。
「凄いのさ。なんだか悪の秘密基地みたいでワクワクするのさ」
実際拳魔もこの辺りを作る時は、そんな思いでワクワクしていた。
だから映里の気持ちはとても理解できた。
螺旋階段の一番上に出た所で拳魔は足を止めた。
一応階段は付いているけれど、二キロの距離を階段で下りるのは面倒だ。
普段は真ん中の穴から飛び降りている。
さてここでどうしようか拳魔は迷った。
「映里はさ、飛翔の魔法が使えたりしないよね?」
一応確認した。
すると映里は挙動不審に答えた。
「えっ?ひ、飛翔?つ、つ、使えないと思うのさ」
映里は嘘が下手だった。
ただ、何か理由があって隠しているのだろう。
この世界で飛翔、つまり空を飛ぶ魔法が使える人は少なくて、使えると何かと目を付けられる事もあった。
軍人に誘われる事も多いし、空から建物に侵入できるので、警戒される対称にもなり得る。
空を飛べるというのは、良い事ばかりではなかったのだ。
それは拳魔も理解していたし、拳魔自身理由は違うけれど隠していたので、気持ちは理解できた。
尤も、映里が飛べる事を隠していたのはまた別の理由ではあるが、ここでは説明を割愛させていただく。
拳魔は少し笑みがこぼした。
「じゃあお姫様抱っこで連れて行く事になるけど良いかな」
拳魔は、映里が自分と似た者同士であると思えたので、自分の能力に関してはもうあまり隠すつもりはなかった。
ただチート過ぎると日本人を疑われかねないので、この世界の常識の範囲内でだけどね。
「えっ?おひ、お姫様なのだ?ちょっと待つのさ!」
少し|狼狽《ウロタ》える映里を、素早くお姫様抱っこして、拳魔は少しジャンプして真ん中の穴から飛び降りた。
「お姫様抱っこなのさー」
狼狽えていたはずの映里は、案外嬉しそうだった。
落ちてゆく恐怖も何もなく、ただジェットコースターを楽しむ女子高生のようだった。
着地点が近づくと、拳魔は飛翔の魔法で落ちる速度を調整し、ゆっくりと下に着地した。
「はい到着」
拳魔はそう言って映里を降ろした。
映里は既にお姫様抱っこの事は忘れ、この地下の実験場に目が釘付けになっていた。
「ここはなんなのさー!」
映里の大声がこの空間に響き渡った。
「ここは僕の実験場だよ。ここで魔法や魔石の実験をしてるんだ。大丈夫。強力な結界で守られた部屋だから、どんな強力な魔法を放っても崩れたりはしないよ」
拳魔がそういうと、映里はいきなり魔法を放った。
スタッフも使っていないのに、その威力はかなりのものだった。
「うん。そのスタッフが認めるわけだ。魔力の流れに全く無駄がないよ」
それは、同じ魔力量で同じように魔法を放てば、映里を超える魔法が放てるものはいないという事だ。
尤も、魔力量がチートの拳魔なら、魔力を重ねる事でそれ以上の魔法を放つ事は可能だけどね。
それに拳魔も魔力は無駄なく使えるので、その部分では五分と言えた。
「拳魔は私の魔法を見ても驚かないのさ」
映里はそれが少し驚きで、少し嬉しいといった顔で拳魔の顔を覗き見ていた。
首をチョコンと十度傾け上目遣いってヤツだ。
男がイチコロになる表情でもあった。
ただ拳魔にはそういう意味での効果は薄かったけどね。
その後スタッフを使わず、映里は色々な魔力量で魔法を放って見せた。
魔力量も相当なもので、これなら『ツインブースト』が可能だと拳魔は判断した。
魔力を二つに分け、二つの魔法効果アップ魔法を発動させる、威力のみを求めたスタッフ作りが始まる事になった。
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