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イコマイ町の貧困対策

孔明は、今日は家里に家にくるよう連絡していた。
携帯魔法通話機をプレゼントする為だ。
そしてもう一つ、以前話していた統治のアイデアを思い付いたので、それを伝える為だった。
「やっほー!きたよー!」
「いらっしゃい」
家里が来ると、孔明はカウンター席から離れ、店内に置かれた椅子に座る。
そして家里がカウンター席に座った。
何故かそんな暗黙の了解ができていた。
カウンター席には、携帯魔法通話機が置かれていた。
「それをプレゼントしようと思ってね」
「これが確か、魔法通話機だっけ?」
家里はそれを手に取った。
孔明は自分のを手に取り、番号を押した。
すると家里に着信を知らせる魔法が働いた。
「なんか面白い。何か音楽のようなものが伝わってくる」
「それは着信を知らせる魔法だよ。そしたらその緑のボタンを押して」
家里は魔法通信機にある緑のボタンを押した。
「押したよ」
「じゃあこうやって耳に当てて」
孔明は魔法通話機を耳に当ててマネするよう求めた。
すると家里も同じようにする。
「聞こえる?」
「うわっ!聞こえるよ?」
家里は驚いて孔明の顔を嬉しそうに見た。
「これがあれば、どれだけ離れていても、大陸内なら話ができる」
「凄いじゃん。私が屋敷に戻っても話ができるって事だよね?」
「うん。大丈夫」
二人はお互い目の前にいるのに、少しの間魔法通話機で話をしていた。
「えっと、最後はここの赤いボタンでいいのね?」
「そう。それで切断される」
「凄いね」
家里はしばらく魔法通話機を眺めていた。
その後孔明は、番号登録機能がある事や、この魔法通話機が家里専用の特別仕様である事を伝えた。
普通の魔法通話機は、ただ番号を押して通話ができるだけのものだし、毎日の魔力供給が必要だった。
しかし特別仕様は、蓄魔池を使って、半永久的に使えるよう作られていた。
「ありがとう。大事にするね」
「うん。魔法もかけてあるから、少々の事では壊れない。それにそれは家里専用だから、家里以外は使えないようになってる」
「うん」
家里は魔法通話機を胸の前で抱くように握り、嬉しさを表現していた。
「それと今日は、前の話の続きなんだけど、働けない貧困層対策についてアイデアが思い浮かんだから呼んだ」
「へぇー。どんな方法なの?」
この世界の貧困層は、大抵親がいない子供だったり、親が病気などで働けない場合がほとんどだった。
そしてそういう子供が盗みを始め、盗賊になるというのがお決まりな流れとなっていた。
「この世界だと、子供が働く事は禁止されていない。でも子供だと働く場所がないから、貧困家庭の子供は盗みに走ったりする。そういう子がいずれ盗賊になる。それを止められたら、かなり治安は良くなると思う」
「うん。そういう子供はなんとかしてあげたいけど、なかなか手が回らないのが現状ね」
「だったら、そういう子供でも冒険者としてやっていけるように、それだけの能力を与えて上げればどうかな」
一瞬孔明の云っている意味が分からなかった家里だが、自分の着けているブローチを見てすぐに気が付いた。
「もしかして魔法道具で?」
「うん。知ってると思うけど、柔ちゃんは五歳だけど十分戦える。多少教育も必要だけど、ちゃんと教えてあげれば、アイテムがあれば冒険者をやれると思う。幸いこの町の南側には弱いモンスターしかいない」
「でも具体的にはどうするの?」
「ギルドに14歳以下貸し出し用アイテムを置いて、6歳以上からギルド登録できるようにする。アイテムは持ち逃げされないように色々と細工をする」
細工は、例えば魔力を蓄える場合は一日しか持たないとか、魔力を蓄えられる人を限定したりして使い物にならなくする。
更に追跡魔法で追跡できるようにして、盗んでもすぐに回収できるようにしておく。
「これなら子供が数時間遊び感覚で狩りをしても、十や二十の魔獣を倒せるはず。その魔石をギルドで売れば、普通に生活くらいはできると思う」
「確かにね。でも夢中になって危険はないかしら」
流石に子供を町の外に出すのは不安があった。
「盗みをするのも危険だし、その辺りは割り切るしかない。一応こんなのも用意してはいる」
そう言って孔明が見せたのは、腕時計だった。
この世界にも時計はある。
大きな建物についてたり、ギルドや商会などの関連店舗には必ず時計は置いてある。
ギルドボックスにも時計機能はあるし、一般家庭にも一つ二つは置いてあって当然だった。
しかし貧しい家庭の人が買うには、少し値が張るものでもあった。
「それは時計?」
「うん。腕に付けるブレスレット型の時計。これには時間を知らせてくれる機能もあるから、そのお知らせが来たら帰るようにすれば、多少は安全を確保できると思う」
「それで夢中になっても安心ってわけね。でもちゃんと迷わず帰ってこられるかしら」
狩りに出た子供が、帰り道が分からなくなるという懸念は確かにあった。
町の北側には大きな岩山が崖のようにそびえ立っているので、山を目指して帰ればある程度町の近くまでは来られる。
しかし南西や南東へ行った帰りに北を目指せば、町の東西にある森に行きつく可能性も高い。
そこには蛇モンスターなど、この辺りでは強い部類のモンスターも多々出現するわけで、危険が無いとは言えなかった。
「だったら、山の真ん中に大きな印を書いておく。それを目指して帰ってくればちゃんと町にたどり着ける」
「そんな事できる‥‥か。孔明だもんね」
家里は『そんな事できるの?』と聞こうとした。
普通に考えれば崖の真ん中に大きな印など書ける者はいないのだから。
「他に何か不安はある?」
「子供が強くなった事で悪さをしたりしないかな?」
「人には攻撃できないようにはしておく。他は?」
「とりあえずないかな?」
「じゃあテスト的に始めてみて、様子を見ながら改善点を探していこう」
「分かった。私は何をしたらいいかな?」
「ん~領主は許可を出したら、後はギルドに任せて大丈夫だと思う」
「だよねー」
こうして、貧困家庭対策はとりあえずスタートした。
最初ギルドには、十個ほどの強化アイテムを置いた。
強化魔法は、主に防御力の大幅アップだった。
そして自動回復や毒耐性アップも付けた。
まずは子供が死なない事が大切と考えた。
その上で新人冒険者以上の攻撃力になるようにした。
ギルド登録の際には、年齢によって多少の教育期間も設けた。
これで子供が約束を守りさえすれば、確実に仕事ができる体制ができあがった。
後は子供がちゃんと約束を守ってやれるかにかかっていた。

一週間ほど様子を見た結果、約束を守らない子供もいたが、みんなそれなりに結果は出せた。
子供たちは覚えも早いし、案外素直にいう事を聞いた。
ただ逆の問題がでてきていた。
貧困層以外の子供たちも結構集まって来てしまって、その仕分けが大変だった。
どういう家庭でどうして働かないと駄目なのか、しっかりと審査しなければならなかった。
まあこの辺りは、ギルド登録していけばいずれ不要の仕事になるので、今はやるしかなかった。
こうしてこの町で、犯罪などに走る子供はいなくなった。
新しい町だから、まだ変に荒れた所も無かったので、この段階でしっかり対策できた事は良かったと言えるだろう。
冒険者を除く、住民の犯罪件数ゼロは、この世界では驚異的だった。
家里の領主としての評判は、この後ドンドンと上がっていく事になった。
ちなみに孔明が山に書いた印は、大きな日の丸だった。
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ドクダミ

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