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第十四話 接触と宣戦布告

夕方、日記をこなして、最後の渋谷から赤坂見附に走るところ。
はたして、一体何があるのだろうか。
俺は、私服のまま走るのは違和感があるので、短パンとランニングシャツに着替えている。
必要最低限は、背中に背負った小さなナップサックの中。
それ以外は、渋谷駅でコインロッカーに入れた。
走るのは結構しんどかった。
やはりタダのニートにマラソンは自殺行為だったか。
それでも俺は、ヘロヘロになりながらも走る。
赤坂見附駅まで行かなければ、おそらく総理大臣が殺されてしまうのだ。
未来ちゃんの未来日記によれば、俺はおそらく18時くらいまでには赤坂見附駅に着くだろう。
17時半を過ぎた辺りで、きっと何かが起こると予想される。
俺の走るペース、現在の時間も加味して予想した結果だ。
それでも、最短で後30分は走るのだ。
しんどい・・・
 みかん「頑張るのさ。」
チラッとみかんを見た。
一瞬、みかんが飛んでいたら、カズオにばれるんじゃと思ったが、よく考えたら見えないのだ。
そして、俺とカズオが出会う事も無いらしい。
どういうシステム、どういった力でそれを妨げるのかは知らないけど、そのへんは安心だ。
何とか、9割方走りきった。
後少しだ。
赤坂見附にあるでかいビルは、俺の視界にもすでに入っている。
もう少し・・・
その時だった。
 宗司「うっ!」
なんだか突然に、疲れが出てきた。
いや、何か不思議な感覚で、身動きが苦しくなった。
俺は立ち止まり、その場にしゃがむ。
 みかん「どうしたのだ?うっ!こ、これは、きっと、近くにカズオと魔女ッ子がいるのだ・・・」
ああ、そうか。
これ以上進むと、俺達は出会ってしまうから、ココで身動きを止められているって事か・・・
 みかん「そ、そうなのさ・・・」
って、これってやばくないか?
こっちが感じているなら、向こうも同じ感覚を味わっているって事だ。
俺は力を振り絞って、立ち上がると、来た道を戻った。
そしてすぐに脇道に入った。
さっきの苦しさは、不思議なくらいあっさりと無くなった。
直後、遠くで爆発音が聞こえてきた。

俺は必至に逃げた。
総理大臣を助けようとしたけれど、カズオとの接近に俺は怖くて逃げてしまった。
これでカズオは、魔女ッ子のご主人様が、近くにいる事を知っただろう。
それにしても、まさか本人が、殺害現場近くに来ていたなんて。
総理を殺すには、それくらいしなければ無理だったって事だろうけど、今回はやられた。
なんとか走って走って、俺は渋谷まで戻ってきていた。
正直、赤坂見附に向かっていた時より、早く戻ってこれた気がする。
恐怖が、俺に妥協を許さなかったのだろう。
全力で走って戻ってきていた。
俺はロッカーを開けて、荷物を出すと、トイレに入って着替えた。
これで、もし赤坂見附辺りで、カズオの仲間に見られていたとしても、大丈夫だ。
まあ、仲間がいるかどうかはわからないけど、一人で総理大臣を殺れるとは思わない。
おそらく、人や金、権力を必要としたはずだ。
俺は最近気がついてる。
この能力は、自分の裁量を越える事は達成しづらい事を。
おそらくだけど、カズオがずっと、株価の上下を予想する未来日記を書いていたのは、金を稼いで、力を手に入れ、人を動かす事ができるようになるため。
そして今、それなりの力を手に入れたのだろう。
少し震えた。
河崎邸に、俺は無事生還した。
 未来「お、お帰りなさい。」
 華「おかえりだよぉ~」
 ゆず「おかえり。」
 すもも「おかえり。」
皆、笑顔だけど、無理に笑顔を作っている感じだ。
俺が無事な事は、おそらく未来ちゃんならわかっていただろう。
 宗司「ただいま。少し、まずい事になった。」
俺は笑顔は作れなかった。
華ちゃんに促されるままに、俺達はリビングに集まった。
そこについているテレビには、「総理殺害」の文字がおどっている。
やはり、俺は止められなかったんだ。
俺達は皆でソファーに座り、ただただテレビを見ていた。
俺があのまま走っていたら、未来ちゃんがあの時間に信号を渡っていたら、このニュースはきっと実現されなかった。
しかし、実現してしまっているのだ。
怖い。
恐怖が俺を襲った。
華ちゃんも、未来ちゃんも、おそらく感じているはずだ。
ココで、俺だけがカズオに殺されれば、この二人はこっそりと生きていく事ができるかもしれない。
カズオが牛耳る世界であっても、きっとこの二人なら、幸せに暮らせるんじゃ。
 みかん「だめなのさ。おそらくそれは無理なのさ。みんなきっと、悪い事を、見て見ぬ振りなんてできないのさ。」
 宗司「そんな事は、無いだろ。俺は今まで、そうやって生きてきたんだから。」
俺は、悪いとわかっている事でも、上司の命令なら従うし、私利私欲の為にそうしてきた。
 みかん「でも、今はもう無理なのさ。」
そうなんだ。
なんとかできるかもしれない力を持ってしまったから、俺はきっと抗いたいと思っている。
華ちゃんと未来ちゃんも、きっとそう思っているだろう。
何故なら、今俺を笑顔で見ているから。
 宗司「よし、落ち込みは終了だ。今日の事と、これからの事を話す。俺の部屋にきてくれ。」
 華「うん。がんばっちゃうよぉ~」
 未来「は、はい。」
 すもも「偉そうやなぁ。」
 ゆず「うん。」
 みかん「あいあいさー!」
みんながいるんだから。
なんとかなりそうな気分になった。

とりあえず、俺の部屋に入ったらまず、テレビをつけた。
どのチャンネルも、総理殺害のニュースばかりだ。
テレビはつけたままで、俺は今日の事を皆に話す。
 宗司「まず、渋谷から赤坂見附をめざして走るところまでは、順調だった。」
俺は皆の顔を見回す。
皆真剣な顔だ。
 宗司「しかし、赤坂見附まで後少し、おそらくは5分も必要でない距離まできた時、俺は意味不明な苦しさに襲われた。」
 ゆず「えっ?疲れが一気に襲ってきたとか?」
まあ、普通ならそういった理由しか考えられない。
後は本当に、久しぶりの運動による体調不良。
 宗司「いや、そうじゃなかった。」
 すもも「もしかして、カズオが近くにいたんか?」
すももの言葉に、ゆずは理解する。
 ゆず「あっ・・・」
 華「ええ?会えないんだよねぇ~」
 未来「ど、どうして。」
 宗司「正確には会っていない。どうやら近づくと、苦しくなって、それ以上近づけなくなるらしい。」
だから、カズオが側にいた事になる。
 すもも「正確には、苦しくじゃなく、いろいろな方法やけどな。」
なるほどね。
近づけない為の、手段の一つってわけか。
 宗司「こちらが気づいた以上、おそらくは向こうも気がついたと考えていいだろう。」
 華「いよいよ、なんですね・・・」
 未来「う、うん・・・」
これで、向こうは俺を、もしくは魔女を持つ者を、探しにかかるだろう。
そして消そうとするのだろう。
しかし、まだ相手に情報を与えたわけではない。
あえて言うなら、東京近郊にいるのではないかと思われているくらいか。
 みかん「今後、きっとみんなの事を探したり、調べたりしてくるのさ。」
 宗司「そういう事だな。」
 ゆず「じゃあ、こちらも調べるのですね。」
そうだな、ガチで勝負するなら、それで確実に勝てる相手なら、それも良いだろう。
でも、相手はできうる限りの準備を既に終えている。
俺達はまだまだだ。
この能力を完全に使いこなしているとは言えないし、力もない。
お金だけなら、華ちゃんからなんとかなるかもしれないけど、力は流石に無理だろう。
 宗司「調べはするが、基本は向こうがボロをだすのを狙う事にする。」
 みかん「消極的なのさ。」
 宗司「こちらが不用意に動いたら、それこそそこからばれる。これは、どちらが先に、相手が誰だか探る戦いでもあるんだ。」
 すもも「それこそ一気にしらべたったらええやん。」
 宗司「ダメだ。わかったとして、俺達がすぐに行動にうつせるとも思えない。長期戦でいく。」
圧勝で、この勝負は勝たないとならない。
「総理殺害を予想していた、未来日記というブログサイトが注目を集めています。」
テレビから、そんな言葉が聞こえてきた。
俺達は、一斉にテレビを見た。
テレビには、ブログサイトが映し出されている。
俺が昨日見た、今日の未来日記が書いてある。
これでは、本当にデスノートみたいだ。
しかしこれは、殺すだけではない。
いろいろな事を実現できるのだ。
少しずつ階段を上れば、本当に世界を牛耳る事もできると本気で思う。
テレビでは、与党議員が、テロには屈しないとか言ってるけど、このサイトを全て見て、本気でそんな事が言えるのだろうか。
おそらく書いてある事は、全て実現されているはずだ。
次、もしも何かがあったら、政治家は確実に屈すると俺は思う。
こうなったら、仕方がない。
政治家が言いなりになる前に、やるしかない。
 華「このままだと、まずいよねぇ~」
 みかん「お偉いさんは、みんな言いなりになりそうなのさ。」
 宗司「その前に、一度は逆らうだろうけどな。サイト調べたり、罠をはったりするはずだ。それで捕まえてくれれば良いけど。」
俺はPCを立ち上げた。
いつもの手順で、未来日記のサイトに繋いだ。
重い。
アクセスが集中しているようだ。
それでもなんとか、ページを表示。
昨日書いてあった文章の下に、追加分があった。
「まだ、いたとは驚きだ。魔女を持つもの、いずれ消す。」
やはり、気がついていたようだ。
俺は決意した。
某国のサイトにキープしていたスペース。
俺は、そのスペースを少し書き換えた。
俺のブログサイトが立ち上がる。
名前は、未来日記。
既に、この名前で検索すれば、このサイトもサーチエンジンに引っかかるはずだ。
サイト名未来日記で登録し、その文字を見えないように細工していた。
今それをオープンにしただけ。
サブタイトルには、「未来日記の悪意を砕く新未来日記。」と書いた。
宣戦布告だ。
 みかん「それでいいのか?」
 すもも「こちらの意志をはっきりする必要性ってあるんか?」
 宗司「このサイトがあれば、カズオは計画だけに力を入れられないし、政治家や権力者も、あっさりとは屈しないと思う。」
敵対する事を宣言する事は、正直怖い。
でも、どうせ向こうは敵だと思っているんだ。
こちらにデメリットは無い。
最初の日記は、「私は、未来日記の計画を砕きます。」と書いた。
しかし思い直して、「俺は、未来日記の計画を砕きます。」と書き換えた。
これは、あえて俺が男である事を主張する為。
送信しようとした。
 華「まってよぉ~。達だよぉ~。」
 未来「そ、そうです。俺達ですよ。」
二人の気持ちは嬉しかった。
でも、ココは譲れない。
 宗司「ありがとう。でも、ココは俺だけだと思わせた方がいい。それが武器になる可能性も十分あるから。」
俺は笑顔でそう言ってから、アップボタンをクリックした。
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