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諜報活動

早朝の事は、まだ夢のように感じていたが、ログを確認すると、確かに「サラ」「サウス」「おとめ」と、志願の言葉が残されている。
理由を聞くと、ゴッドブレスは、元々ドリームダストを倒す事が目標で、ライバルなのだとか。
そして、ゲームでお金を稼いで、それで生活する事が目的のサークルでもあるらしい。
ゴッドブレスのうちの2人は、都合があってダイユウサク軍に所属している。
でもやはりライバルだから、残る3人は別の軍でやりたい。
ゴッドブレスとしても、ダイユウサク軍が勝てなかった時の保険も欲しい。
そこで、ダイユウサク軍以外で、優勝を狙える軍を探していたんだそうだ。
自分たちで強い軍を作る事も考えたが、このゲームの戦略面を一から勉強するには、時間が無いし、だったら強いところに入るのが一番だろうと言う事だ。
 紫苑「でも、君たちがダイユウサク軍のスパイである可能性を、完全に否定できないんだけど。」
そうなんだ。
リアル友達が何人もいるダイユウサク軍に、こちらの情報をリークしない保証はどこにもない。
それにいざとなったら、やはり裏切る可能性は十分にある。
この人達が裏切る事で、報酬が貰えなくても、仲間は優勝して大金を手にするわけなのだから。
 サラ「そのあたりは、信用してもらうしかないですね。こちらの情報は一切もらさないし、裏切りもしない。もちろん向こうの情報もこちらに入れる事はできないけど。」
さて、紫苑さんはどうするのだろうか。
この人達の強さは魅力だ。
この力があれば、ダイユウサク軍はもちろん、ジーク軍とだってかなりやれそうな気がする。
問題はスパイになりえるのか、そうでないのかだ。
俺としては、是非我が軍に入ってもらいたいと思っている。
紫苑さんは少し悩んでいるようだ。
メリットは、なんと言っても戦力が格段にあがる。
デメリットは、情報が漏れるリスクであり、裏切り。
だけど、前にドリームと戦った時の感じ、そしてこれだけの有名人だ。
裏切るなんて行為は、このひとたちにとっても凄いリスクになりそうな気がする。
ゲームで生活しようとしているのに、悪い噂があると、今後勝ちにくくなるだろうし。
 紫苑「向こうの情報を提供するとか言われたら、断ろうかと思っていたけど、どうやら信用できそうだ。よろしく!(^0^)/」
俺の期待通りの結論を、紫苑さんもだしてくれた。
少しの|間《ま》は、きっと紫陽花さんと相談でもしていたのだろう。
 サラ「ありがとうございます。階級に関しては何でもオッケーですが、できれば最前線を希望しますのでよろしくです。」
希望されなくても、これだけの人達を最前線で使わないなんて、もったいない。
一緒に戦うのが楽しみになってきた。
しかしその望みは、しばらくは無いと、いきなり告げられた。
 紫苑「階級は、サラが大佐、おとめとサウスが少佐で、小麗の月天に乗ってもらう。そして旗艦とは別部隊を指揮し、今後頑張ってもらいたい。」
なんと、一緒に戦う事を楽しみに思った瞬間、別働隊宣言ですか。
そしていきなりこのサラさんに、隊長を任せるとな。
確かにこのサラって人は、中々やりそうな気がするし、戦えば強い。
でもいきなりすぎるこの優遇。
紫苑さんも思い切ったものだ。
まあ1日1拠点で今まではやってきていて、このまま続ければ宇宙だけで10192日はかかる計算だ。
部隊を分けて、同時攻略はそろそろ必要かもしれない。
 サラ「了解。小麗って、戦闘不能機を回収していた艦長かしら?」
 紫苑「そそ。」
 サラ「なるほど。期待に応えますよ。」
小麗さんの力は、昨日の戦いで確認できた。
艦船運用は、おそらく紫陽花さんクラスか、もしかしたらそれ以上。
我が軍でナンバーワンかもしれない。
そんな人の艦に乗せる事から、期待がうかがえる。
今までは正直、優勝を目指してはいたが、そのイメージというかビジョンは全く見えていなかった。
3人の入隊により、優勝できる可能性が見えてきた気がした。
紫苑さんの旗艦は、言わずもがな我が軍の主力だ。
紫陽花さんの艦は、俺とチョビがいて、かなりやれるだろうし、今後テンダネスのレベルが上がれば、もっともっと強くなる。
星さんのスピードスターは、昨日は暗黒天国さんがいなかったから力を出せなかったけれど、戦局を一変する力があるらしい。
そして小麗さんの月天に、ゴッドブレスの3人。
この艦船が、今うちで最強になっているかも。
だから単独で別働隊。
少し悔しい気持ちもあるが、別働隊なのは、まだ完全に信用していないからかもしれない。
俺はもう、既に疑う気持ちは全くなくなっていたが。
なんにしても、やる気はマックスになっていた。

 一生「やる気マックスだったんだけど・・・」
俺は何故か、諜報活動で今はジーク軍の本拠地、コロニーのイスカンダルに来ている。
サラさんが、一度全ての有人拠点で、諜報活動をするべきだと提言してきた。
確かに、イルマ軍に負けたのは、どんな人がいるのか、どんな戦力なのか、しっかり知らなかったからだ。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
自分たちの戦力はある程度理解はしているが、敵の事を全く知らなかった。
諜報活動は、ある程度は、一応やってはいた。
NPCに任せていたので、得られる情報は少なかったが。
でもそれではダメだ。
有人拠点なら、一般プレイヤなら、安全に諜報活動ができる。
民に交じって、情報屋から情報を聞くだけだから。
おそらくは、我々の拠点、シオンやカテーナにも、他の軍のプレイヤが出入りしていて、情報を集めていたりするのだろう。
要塞と、移動要塞、要塞戦艦での諜報活動は危険なので、それらでは行わないが、他を全て回る予定だ。
 一生「いったいどれだけ時間がかかるのだか・・・」
俺は最初断りたかった。
しかしだ。
諜報活動で得る情報の信頼性は、キャラのレベルに比例しているらしく、キャラレベルの一番高い俺が行かざるを得なくなった。
一応相棒として、みゆきちゃんもついてきてくれる事になったのだけどね。
ちなみにみゆきちゃんは、最近まで休んでいたけど、つい先日復活した古くからのユーザーだ。
前作の宇宙の絆でも紫苑軍に所属し、そこそこ頑張っていた人。
 アライヴ「みゆきちゃん、あの人に聞いてみようか。」
 みゆき「もしかしたら、情報屋っぽいもんねw」
街には、情報屋と言われる人が2種類存在する。
ひとつは、ノンプレ(蔵の人が操作しているNPC)で、俺たちのレベルによって情報をくれる、正規の情報屋だ。
もうひとつは、プレイヤの情報屋だ。
レベルの高いキャラは、この拠点の情報を売る事で、金儲けをしている。
中にはリアルマネーを要求する、ハイレベルな情報屋もいるが、そこまでして情報を集めるつもりはない。
敵戦力がある程度わかり、俺が納得できる程度集まれば、そこはそれでオッケーだ。
 情報屋「情報が欲しいのかい?」
 アライヴ「はい。教えていただけますか?」
 「君のレベルだと、ココのAランク情報と、軍のBランク情報が、100000ドルだが、どうする?」
十万ドルか・・・
情報内容をランクダウンすれば、おそらく半額以下になるのだろうけど、ココはジークの情報だ。
ケチってる場合じゃない。
それにこの金は、俺個人の金でもないからね。
ちなみに、十万ドルとは言うが、実際のドルの価値とは比べられない。
ただ、リアルマネーで買ったりしている人の相場を考えれば、200円程度から1000円くらいまで。
 アライヴ「ではお願いします。」
俺は相手に、十万ドルを渡すプロセスを行う。
俺の持ち金が、その分減った。
情報を貰う時、相手がノンプレなら、先にお金を渡すのが決まりだ。
しかしプレイヤの情報屋には、詐欺にあう場合があるので、お金と情報ファイルの交換が原則だ。
お互い信用できない場合は、交渉自体成り立たない事もある。
今回はノンプレだったので、先に全額支払う。
 情報屋「では、データを送る。確認してくれ。」
俺はデータベースを開いた。
するとそこには、この拠点のAランク情報の書かれたファイルと、ジーク軍のBランク情報があった。
 アライヴ「確かに。」
 情報屋「では、また何かあったら、聞いてくれ。」
情報屋はそう言って、街中へと消えていった。
さて、情報の内容を見てみるか。
とりあえず、先にファイルをコピーして、みゆきちゃんと紫苑さんに送っておく。
情報ファイルは、コピーする事はいくらでも可能だ。
それを、同じ軍の者に送る事も自由。
俺はファイルを開いた。
まずはこのイスカンダルのデータからだ。
生産性は中の下だか、戦闘の無い平和なコロニーで、最近の人口増加率は高い。
キャパが決まっているから、そろそろ上昇は止まるだろうが、ジークの評判も良い。
感じとしては、我が拠点のシオンとそっくりだ。
あらゆる面で似ていた。
場所も、丁度対角にあるので、当然と言えば当然か。
本拠地ではあるが、ココに駐留する艦船は0。
 アライヴ「流石に、ココに艦船はいないか。」
 みゆき「情報が筒抜けになるもんねぇ。」
こうして諜報活動をして初めて知ったが、自分の艦船を有人の拠点に置く事にはデメリットがある事を知った。
民のいる拠点に艦船をおいていると、自分の情報が筒抜けになっていたのだ。
ただ、民の出入りを規制したり、民との信頼関係を高くする事で、情報が漏れないようにする事は可能で、紫苑さんはおそらくそうしていたのだろう。
出入りを規制すると、生産性は半減するけれど。
情報を守る事を優先するか、生産性を優先するかって事だ。
今ではシオンに駐留する艦船は0なので、出入りは自由にしていると思われる。
それに民との信頼関係も高いし。
さてこのファイル。
残る情報は、一度でもこのコロニーに出入りした艦船データだった。
「2時間前、ジーク、バルバロッサ、詳細情報無し。」
2時間前に、ジークがココに来たようだ。
詳細な情報が無いって事は、短時間だけの滞在、すなわち、設定変更だとか、研究の支持だとか、用があってきただけって事だろう。
滞在する時間が長くなれば、その分情報量は多くなるようだから。
後は、民との信頼関係も関係する。
戦闘の無い平和な場所の民は、みんなジークの味方であるから、なかなか情報は出てこないって事だ。
他の情報は、見ない名前が何人かいたが、細かいデータは無く、特に思うところはなかった。
情報の最後の方には、四天王の群青さんの名前もあったが、データは3カ月ほど前の物だった。
意外にも、その頃の詳細なデータが書かれていた。
流石に、レベルも高いし、撃墜数も多い。
今の俺よりも少ないが、これは3カ月前のデータだ。
3カ月前の俺と比べてどうだろうか。
ふと気がついた。
群青さんも、今は俺のライバルなのだなぁ~と。
では次に軍のデータだ。
こっちの方が興味ある。
軍のBランクデータとなると、かなり詳細に書かれている。
俺のレベルが高いから得られる情報だ。
さて、どんなものか・・・
俺は愕然とした。
 みゆき「ジーク軍、凄い数だねぇ~」
 アライヴ「ああ。」
そうなのだ。
俺たちが必死になって、ようやく40人弱のプレイヤを集めたのに、ジーク軍はすでに200人を超えていた。
しかも、この情報はBランクで、完璧ではない。
おそらく予想するに、300人はいるだろう。
アクティブでないプレイヤも多そうだけど、やはり最大の敵はジークか。
そう思った。
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