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第七話 新規要塞

しばらく俺達は軍を立て直していた。
コロニーは思った以上に生産性が高く、金には困らない。
成長性も成長余地もまだあるし、4大勢力のどれかが全軍で攻めてこないかぎりはなんとか守れそうだ。
薔薇の貴公子ひとりでも、あれだけの守り。
俺らはその守りにいくつか変更点をくわえて守りを更に固めた。
文句の無い本拠地になりそうだった。
いや、ひとつ文句があるな。
中立ドックから遠いから、新規兵器の移動がしんどい。
コロニーのドックが充実するまでは、しばらく我慢だった。
で、1週間。
俺の部隊も、軍も、全てが一通り完成した。
まず、大将は「サイファ」。
中将に「LOVEキラ」と「真でれら」。
守り専用の艦隊を率いるのは、NPC3人。
それぞれの持つNPCのナンバーワンを集めた。
全て准将。
少将は、今後プレイヤの仲間ができた時の為にあけておく。
それ以外にもNPCそれぞれ1人を准将にして、艦隊を動かせるNPCをキープ。
拠点ひとつでこれだけの将官が設定できるのは、このコロニーの生産性の高さのおかげだ。
後は参謀もそれぞれ1人設定。
それ以下はそれぞれが好きに設定した。
ココで俺の3艦隊を紹介しよう。
あまり複雑な名前はややこしくなるので、俺は第一艦隊、第四艦隊、第七艦隊と名付けた。
友達の艦隊はもちろんそれ以外の数字ね。
第一艦隊は、旗艦が「補給くん2号」で、搭乗員はもちろん俺「サイファ」と参謀「ロバート」。
ロバートは攻撃力に優れた参謀で、俺の苦手な部分をフォローしてくれるはずだ。
戦艦は3隻で、2隻は護衛艦。
それぞれ「ロイ中佐」と「マサユキ少佐」。
同じ階級にしないのは、命令系統で混乱を防ぐ為に必要だ。
特に同じ部隊では。
2人ともバランス型のハイレベルキャラだ。
で、残りの1隻が高速戦艦で「チャーリー大尉」。
補給戦艦が9隻で、うち6隻は直属艦船。
指揮は「艦長A」って事になるのかな。
直属艦船の力は、指揮官の力の70%程度の力となる。
残り3隻は、「ロベルト大佐」「トゥーリオ中尉」「チャン少尉」。
皆、俺が補給特化で育ててきたやり手艦長。
ナンバーワン補給を助けてくれる。
この艦隊をトータルで説明すると、持久力有り、スピード有り、反応早く、艦隊運用はうまい。
通信回線レベルをワンランク下げる事で、盗聴の危険はあるが連絡は早い。
まあ盗聴に対しての対策もばっちりなので問題なし。
補給は超早く、攻撃を防ぐ事にも優れている。
欠点は攻撃力が瞬間的には強いものの、通常は弱い。
装甲は薄いので、被弾した時はもろく、システムが複雑なので多くの艦船を率いる事には向かない。
多くを率いる時は、各艦長の裁量に任せる事になるだろう。
とまあ、欠点は限りなく完璧な欠点だが、それは俺が頑張ればなんとかなるだろう。
後は経験の中で調整していくだけだ。
次に第四艦隊は、本拠地を守る艦隊だ。
友達の第五第六艦隊と共に、回廊の出口を固める。
通常は二次元的に部隊配置するが、プレイヤが3人いるから上下もカバーできる。
俺の第四部隊は、上部を担当だ。
真の第六部隊が基本エリアを担当。
何せ守りだけなら相当強いから、敵の攻撃にさらされる部分を受け持ってもらう。
下方はキラの第五部隊。
下への攻撃はかなり難しいから、ディフェンスの弱いキラには良い。
突破する時上方を選ぶのは、そう言った事が関係している。
と言っても、プレイヤの多い軍を相手にするなら、上方が空いている保障は何処にもないけどね。
まあ、最初からココを攻略できる奴なんて皆無だろうな。
で、2回目には持久戦でくるか、それとも中央突破かになるだろう。
上や下に突撃する選択肢は、俺が敵ならまずごめんだ。
なんにせよ、納得な守りができた。
第七艦隊は、第一艦隊のNPCによるコピー艦隊のような感じだ。
旗艦は「補給くん号」で、第一艦隊よりスピードと補給機系は若干落ちるが、装甲と攻撃力を上げてある。
そうそう、狙っていたわけでは無いが、俺達3人は運良く、それぞれの特化キャラを育てていたから、艦船作成の際みんなで協力してやることにした。
更にはNPCもトレードしたから、友達2人も近場で短時間なら、俺の補給が無くてもかなりやれる状態になった。
とはいっても、近場に現在敵認識している相手はいない。
中立のシリウス要塞から攻撃にでれれば良いのだが。
要塞以外の本拠地を持った軍は、中立要塞や地球での物資購入には、デメリットが出てくる。
物資購入とはエネルギやミサイル、食料を購入して補給艦や艦船に補給する事だが、自軍拠点以外でそれを行うと、国力が下がるのだ。
買うなら自国の生産品を買えと、まあそういうことだ。
ちなみに要塞は生産できないが蓄える事ができる。
しかし中立の要塞は共用なのでそれはできないので、事実上中立要塞からの出撃は不可能になっていた。
さて、当面我らがサイファ軍の目標は、遠征しやすい場所に砦を作るか、それとも奪うかになる。
マップ下にはまだ敵対していない「炎のドラゴン軍」がかなりの戦力だが、まだ敵対するには早い。
左と上にかけては、中小の軍が点在しており、攻略するならこの中から攻略対称を探すのが良さそうだ。
しかしどちらも少し離れているから、左上中間地点に要塞を作る事にした。
まずは輸送艦を作成。
完成までに必要な物資に目処が立つまで、数日を要した。
作成場所は3人で決めた。
特に良いマップとは言えないが、何もない見通しの良いところを選んだ。
小細工や戦術があまり必要なく、数が物をいいそうな戦場。
周りの軍の規模を考えての決定って事だ。
全てを決めて作成を開始した。
ここから完成までの、リアルタイムで約4時間は、3人で領域を守らねばならない。
輸送艦への攻撃、制作中の要塞の破壊、それらを狙っているプレイヤがおそらくいるはずだ。
一応ゲーム人口の少ない平日の昼過ぎを狙ってやってはいるが、俺たちみたいなニートは、全国に大勢いる。
3時間半が過ぎた頃、やはり攻撃を仕掛けてきた。
この完成に近い時間に攻めてくるのは、被害が大きいから当然の時間だ。
攻撃してきたのは、要塞を作成してる位置から、一番近い所に軍の拠点要塞を持つ、紫苑軍だ。
作成中の要塞は、友達2人が守っている。
俺は状況を通信で聞いてるだけだ。
 真でれら「敵は紫苑軍四天王のうちの2人、紅蓮と麒麟だな」
 サイファ「今こっちは輸送船護衛しながら向かってるけど、どうだ?大丈夫か?」
 LOVEキラ「ココだとどうしても削りあいだな。ちょっときつい」
 真でれら「一応名前聞いたことある相手だからな」
 サイファ「後5分でそっちにつきそうだけど、耐えれるか?」
現状ややおされ気味のようだが、俺が到着すれば数的優位になる。
 真でれら「俺はいけるけど、キラがきついかもな」
 LOVEキラ「こっちは瞬発力勝負じゃ。守りなんてー!!」
 サイファ「なんとか絶えて、ポジション調整頼む」
 真でれら「まにあうかな。キラは外周頼む」
俺が頼んだのは、我が艦隊が到着した時、攻撃しやすいところに敵を誘導しておいてくれということだ。
まあ、そう簡単にはいかないだろうが。
最悪守り抜いていれば問題ない。
輸送艦の動きに合わせるのはじれったかった。
なかなか進まない。
 サイファ「どうだ?」
 真でれら「後2分あればなんとか」
 LOVEキラ「こっちは2分もたねえかも 泣」
このまま進めば丁度2分後に到着しそうだ。
しかしキラが崩れると、元も子もない。
俺は輸送艦に先行するかたちで2人の元に向かった。
ココまでくれば大丈夫だろ。
そして1分10秒後、敵影を捕らえた。
直ぐに後ろを取れる位置では無いが、側面は捕らえた。
一斉攻撃。
攻撃力の低い我が艦隊でも、それなりにダメージを与えたようだ。
 LOVEキラ「俺は一旦再編」
 サイファ「真は頭押さえて!後ろを狙う」
 真でれら「おけ」
敵軍は弱くなった前方の突破にかかる。
予想どおり。
俺の艦隊の攻撃力なら、背後をとられても大丈夫だと考えたのだろう。
それともスピードについてこれないと判断したのか。
ようは補給艦の多い艦隊を無視してなめきっているのだ。
真は押さえつつゆっくり誘い込む。
俺は簡単に背後をとった。
後は俺の得意な戦法だ。
 達也「チャーリー大尉ゴー!!」
強力な一撃が敵を襲う。
敵の補給艦群が全滅だ。
部隊再編をしていたキラも再び攻撃に出る。
俺も第七部隊を突撃させた。
 達也「いけいけベッカム准将!」
後は楽勝だった。
まあ3対2だし、艦隊数も6対5だし、敵は俺を無視したし。
毎回の戦闘で思うのだが、補給艦の多い艦隊は、敵の油断を誘えて良いなと思った。
まもなく紫苑軍の艦隊は撤退を始めた。
 LOVEキラ「追撃するか?」
 真でれら「いや、俺らも結構やばいし」
友達の第二、第三、第八、第九艦隊は、これ以上の戦いは無理なくらい傷ついていた。
それにしても、四天王の2人だけしか攻めてこなかったのは助かったな。
おそらくはこの時間だから、出撃できるのが2人だけだったのだろう。
まあ、作戦勝ちといえばそのとおりだった。
まもなく要塞は完成した。
これでココに艦隊と物資をおける。
まだできたばかりで、戦力としては期待できない要塞だけど。
さて、俺はできたばかりの要塞に入港しようかと、椅子にもたれかかっていた体を起こした。
その時、左に機影が見えた。
 達也「なんですとぉ!」
新たな敵だ。
このタイミングで来たということは、出来たばかりの要塞を奪いにきたか、それとも戦いの後弱ったところを狙ったのか。
おそらく両方だな。
俺は苦笑いしながら、敵軍を確認した。
ソロの在野軍、「薔薇の貴公子軍」だ。
先日の復讐か。
まあいやなタイミングで嫌な敵だ。
友達2人は要塞に入港しようとしていたので、敵に背を向ける形だし、距離はあるが俺の左から来る形だ。
俺は進路左で全速前進。
おそらく10秒後に正面衝突予想。
 サイファ「ふたりは前進、進路は左。旋回はするな」
 LOVEキラ「うげ」
 真でれら「おけ」
予想どおり正面からの衝突だ。
一戦した後だけに、かなりきつかった。
真っ向勝負だとやばいな。
アレを試してみるか。
失敗するとかなりきつい事になるだろう。
もしかしたら全滅するかもしれない。
まあ、死ななければいいか。
俺は試す事にした。
戦闘中も友達からの通信は入ってきていた。
 LOVEキラ「やばいよ」
 真でれら「まにあわねぇ。がんばってくれ」
俺は通信回線を一番緩いのに変更した。
こちらの通信は、敵に傍受される確率がもっとも高くなった形だ。
後は相手が諜報活動をきっちりしてくれている事を祈る。
相手はなかなか出来る、薔薇の貴公子さんだ。
きっと傍受してる。
俺は第七艦隊のリヒタルゼン中尉に、I字陣形にして突撃命令を出すと、直ぐに本体を丼型陣形(俺オリジナル)に陣形を変更させた。
すると通信記録に
 サイファ「I字陣形にて突撃!」
とでた。
コレは俺が前に、傍受対策として行った、攪乱システム。
暗号命令としても使う人がいる方法。
今俺が「I字陣形にて突撃!」といえば、それは「丼型陣形にて敵を包囲!」となるのだ。
しかしコレを見た相手はどう思うか。
どう行動するか。
一応フェイントでリヒタルゼン中尉を突撃させている。
護衛艦だから、何とか死なずに帰還してくれるだろう。
それを囲むように、相手陣形が変わる。
U字陣形に変更したようだ。
そしてそれを囲むように、俺の艦隊は相手を包囲した。
良し!
突破を達成したリヒタルゼン中尉はずたボロで、まっすぐ航行することもできないくらいやられていたが、俺の主力艦隊は敵の背後からどんどん敵を殲滅していった。
気がついた薔薇の貴公子さんは、艦隊をクロスさせて正面対決の形をとってきたが、時既に遅し。
補給もそろそろきつそうで、みるみる弱ってゆく。
こっちは物資による能力低下は全くない。
決着はついた。
さて、問題は薔薇の貴公子さんの旗艦だが、逃げるのも諦めたのか、通信要請がきた。
俺は攻撃をやめて回線を開く。
 薔薇の貴公子「逃がして!(笑)」
最後の交渉にきた。
俺は返事を返す。
 サイファ「条件次第w」
 薔薇の貴公子「なに?」
 サイファ「こっちの軍にはいらねぇ?」
別回線から、「無理だって」と友達からの通信が入ったが、意外にも好感触だった。
 薔薇の貴公子「報酬は?」
 サイファ「少将で1%」
 薔薇の貴公子「よろしく」
交渉はあっさり成立した。
軍を抜けられる心配はもちろん有る相手だったが、裏切りに関してはデメリット大きいから、大丈夫だろう。
あのジークの反乱が成功して、ゲーム調整が入った。
だから今は反乱をしようなどと思う奴はほとんどいない。
やるのは馬鹿だけ。
反乱したら、まず全ての軍と敵対関係になる。
成功率も大幅に下がり、全てを完璧に準備しても、成功率は1%もない。
さらに反乱を起こした場所のみを得て、他は全て一旦中立になる。
まあとにかく、使える仲間が増えた。
接近戦と地上戦が得意なバランス型プレイヤのようだ。
レベルは友達2人より上だった。
第十から第十二艦隊を任せ、本拠地の艦隊の再編を行った。
第五、第六、第十一艦隊で回廊出口と直ぐ後ろを固め、更にその後ろを第四艦隊が守る鉄壁の守りが完成した。
まあ、自分で言ってるだけだけど。
新要塞の名前は、甲羅要塞にした。
防衛責任者は「真でれら」にして、甲羅艦隊を新設した。
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